このままではアーモネイディアとディヴェルダの間で戦争が起こる。それを阻止するためには、人格調和機構のシステム「エルピス」を操作するしかない。
ファントムの言葉に衝撃を受けつつも、納得していく半星府組織シンフォニアのメンバーだが、ファントムを受け入れられないソロは、シンフォニアを飛び出して……
第10回スニーカー大賞奨励賞受賞作の下巻です。あまりに久しぶりで、かなり忘れてるところがありましたが、面白かったです。
みなが必要としているのは、自分ではなく、もうひとつの人格のファントムだと嘆くソロの気持ちは、好きな人を守ることができなかった後悔と相まって、心に痛いものがありましたね。そうではないというリリンやエオリアの言葉が届かないやり取りは、どちらの気持ちもわかるだけに辛いものがありました。
この二人(三人?)に限らず、多重人格であっても、結局のところ人であることに変わりなく、心を痛めるのは人との係わり合いなんですよね。ひとつの身体に愛する男女がいたり、好きな人は自分の別人格を好きだったりと、姿形こそ違うものがありますが、思いは変わらず、切ないものがあります。
個人的に好きなシーンは、適役に位置するユノの別人格であるエレクトラの友人たちが、手紙をもらった場面ですね。人格を複数持つ人の気持ちもさることながら、その別人格と付き合いのある人たちの気持ちもまた、切ないものがありました。「バカよ……」という言葉に込められた気持ちに、思わず目頭が熱くなりました。
このあと始まる最後の戦いは、迫力といいスピード感といい、素晴らしくて一気読みさせられます。それ以上に素晴らしかったのが、終わり方ですけどね。これしかないという結末は、悲しくて、切なくて、でも希望が見えて。
幸せな罰や、名人のちょっとした運命の悪戯や、詐欺師の本音など、素敵な素敵なエピローグばかりでしたが、不思議な言葉の国のことを思うロジェールのことを考えると、いつか……という言葉を使いたくなる終わり方でしたね。
登場人物というよりは、登場人格が多くて誰が誰だかわかりにくかったり、上巻から間が空いたこともあって、いろいろ忘れてる事が多かったんですが(つまりは僕のせいなんだけど)、それでも面白かったんだから、わかってたらもっと面白かったんだろうなあ。
手をつける前に、パラパラとでもいいから、上巻を捲って置けばよかったと、ちょっと後悔してますが、思ったより楽しめたので、結構満足してます。
あとがきによると、新たな物語の構想はいろいろとあるようなので、次にどんな物語をもってきてくれるのか楽しみですね。
多重心世界シンフォニックハーツ (下)
永森 悠哉
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