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[葵ゆう] 召喚王子ユリウス 任務デビューは華やかに

虚の世界で生まれた異界生物を総称して「蟲」という。その蟲を召喚して操る蟲術師の資格を最年少で取得したユリウスは「サラデイゥス王国の異常気象の原因を究明して安定させること」という任を拝命した。といっても師匠であるテオールの補佐としてだが。
ところが、王宮で待ち受けていた女王陛下とは、十二歳ぐらいの幼い少女で、何かとわがままなヴィラージュ女王に振り回されながら、ユリウスが任務をこなしていたら、ある日、王宮に勤めていた侍女が殺害される事件がおきて……

治安維持を目的とする巡査官となった蟲術師のユリウスが、師匠のテオール、神獣の白鴉などの仲間と共に、問題に立ち向かっていくお話です。

あー、いいなあ、この雰囲気。
蟲術の才を持つまじめでな美少年ってことで、学校時代に「召喚王子」とあだ名をつけられたユリウスですが、嫌がってる本人を尻目に、テオールや白鴉があだ名で呼ぶときの雰囲気がいいです。からかう意味もあるけど、それ以上に愛情も伝わってくるんですよね。ほんのワンシーンで見える三人の関係に、思わず頬が緩む。

その三人で、ユリウスの初任務地であるサラデイゥス王国へと向かうんですが、ここの女王陛下との出会いが、また良かった。ただのおてんばな女の子かと思ったら、それが実は実は両親を亡くした寂しさの反動だってことが見えてきて、ヴィラとユリウスの間に、ちょっとずつ優しい繋がりが見えてくるところが、とても温かい。ユリウスの術によって、ヴィラの笑顔が見れたときには、こちらまで嬉しくなるものがありました。イラストも素敵。

任務である調査を進めるにつれて、王宮内で殺人事件が起きて、町で起きてる行方不明事件も、関連があるのではないかと、サラデイゥス王国にきな臭さが漂ってくるんですが、このあたりはいろいろ引っ張りすぎな感じがあって、ちょっと物足りなかったかな。ギリギリで覚醒じゃないけど、そういうのも……と思わなくもない。

でも、このお話の一番の魅力は、戦闘シーンじゃなくて、人と人との繋がりが見えるところですよね。戦わねばならぬ者心の痛みや、辛さを乗り越えるために流す涙、そして心に傷を負った少年を優しく包み込む大人など、心情が伝わってくる描写がとても素晴らしかったです。ちょっと地味かもしれないけど、こういうお話好きだなあ。

サラデイゥス王国には、調査に来ただけだから、ヴィラとはこれでお別れかあ……と思いきや、おっとっと。ぼやかして書いてるけど、これは、続編があるなら、ヴィラも登場するというフラグかしら。
今回は、寂しさからちょっと引っ込むところがあったけど、次はいい感じにユリウスを振り回してくれる予感がするので、そうなると、とても面白くなりそうですね。これは今から続きが楽しみです。

第5回角川ビーンズ小説大賞奨励賞受賞作。

召喚王子ユリウス―任務デビューは華やかに- 葵 ゆう

召喚王子ユリウス―任務デビューは華やかに
葵 ゆう

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