「残念なお知らせだ、ミレーユ。きみの存在が内外に知られてしまった」
ジークはじっとミレーユを見つめて口を開いた。
「きみはこれから、ベルンハルト公爵令嬢としてシアラン大公に嫁いでもらう」
室内が静まり返る。
「それが嫌なら、私の後宮に入れ。今すぐにだ」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第五弾。今回は、ミレーユの存在が公になってしまい、ジークから「政略結婚をするか、それを断る理由として後宮に入るか」を迫られて、というお話。
つい先日のリヒャルトとのやり取りから、妄想が暴走してるミレーユの様子には、笑いが止まりませんでしたが、今回はちょっとシリアスな展開でしたね。他国が目をつけてきたことで、一躍ミレーユの存在が危うくなるところが、何ともやるせない。
守ろうとするものと、仕方ないと言い出すものといろいろでしたが、そんな連中がいつの間にか、雪合戦する展開にもって行くミレーユが好きです。シリアスなんだけど、この子が頑張ると、なんか笑えますよね。こういう人だから、みんなから好かれるんだろうなあ。
ジークが「後宮へ」なんて言いだした理由はすぐわかりますが、そこまで焚きつけても、リヒャルトが動かないのは、これからが辛いと自分で思ってるからなんでしょうね。強情な男だ。
後ろ盾になってくれると伸ばしてくれた手を断り、一人戦いに向かおうとするリヒャルトの覚悟には、愛しい人だからこそ、という思いが見えて、何とも切なくなってくる。
中でも一番キタのは、セシリアとのやり取りでした。あのツン度高いお嬢様が、あれほどまでに……。やさしい兄の視線を見せるリヒャルトが忘れられません。
いろいろ切なくやるせない展開ばかりでしたが、でもでも、あのミレーユが、ただおいていかれるわけがない!いまだ本格的に自覚することない思いだけど、その思いに突き動かされて、リヒャルトを追いかけようとする姿に、頑張れ!と応援したくなりました。
再会できたときの夜、リヒャルトの思いが温かくてたまりませんでした。
今回は完全に続きなので、まだまだ脱走劇は続きそうですね。っていうか、身代わりしてませんが、そのあたりは気にしないことにしておく。リヒャルトとの関係はいまだ進んでいませんが、このまま彼を見過ごすはずがないであろうミレーユが、どんな感じで殴りこみにいってくれるのか、とても楽しみです。
続編が出るという十月がとても待ち遠しい。
身代わり伯爵の脱走 (角川ビーンズ文庫 64-5)
清家 未森
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