双子の兄の身代わりとして、王宮へあがった騒動も一先ず決着がつき、さあ、パン職人の道へ進むぞとミレーユが決意した矢先に、再び兄から手紙が舞い込んできた。傷心旅行に出るので、身代わりよろしく、と。
問答無用でお迎えがきて、またもや兄の身代わりとして伯爵をやることになったが、今度はなんと、隣国の女伯爵シルフレイヤとの結婚話が持ち上がっていて……
貧乏パン屋の娘ミレーユが、伯爵家の養子にいった双子の兄フレッドの身代わりとなって、王宮へ行くお話ですが、今回は隣国の女公爵シルフレイアとの結婚話が持ち上がって、というお話ですが、いやあ、楽しい楽しい。
怪談大好きで、特技は呪詛返しな女の子のシルフレイアのおかげで、肝試しやらなにやらをやらされて、ビクビク怖がりながら、でも他人の目があるところでは、平気だもんねと強がる姿が面白いったらないです。結局リヒャルトにはバレてしまうんですが、暗闇でのお約束なシーンの連発にニヤニヤ。
はじめから最後まで、恋を恋と気づかない二人のやり取りには、クーとさせられるんですが、個人的にヒットしたシーンは、女嫌いなんじゃないかという噂を聞き及んだミレーユが、リヒャルトに対して練習台になってあげるというところですね。善意から来てる言葉であることに間違いはないですが、真っ直ぐな視線からそんな言葉を告げられたら、もう……!!必死に抑えながら、彼女を諭すリヒャルトの心が窺えます。
まあ、リヒャルトはリヒャルトで、さりげなくミレーユがのぼせる様なこと言ってるんですけどね。どっちもどっちな天然対決に、頬の緩みが止まらない。
そんな二人の関係は満足でしたが、ストーリィ展開はちょっと物足りなかったかな。シルフレイアの別の目的については、まあいいとして、彼女と例の人の恋物語は、もっと、こう、盛り上げてくれたら、と思わずにいられない。二人ともいいキャラなだけに、もったいない。ほんと、もったいない。
個人的にうれしかったのは、前回同様、セシリアが出てきたことですね。この激しいツンデレは可愛いったらないですよ。自分で怪我させた相手に薬を渡しながら、怒鳴り散らす姿は絶品でした。このワンシーンだけでも、ツンデレスキーなら見る価値はある。超お気に入りキャラです。感情が爆発すると迷惑この上ないですが、たぶん、お付の人たちは、彼女の優しい面も知ってるだろうから、苦笑しつつも、側にいたがるんじゃないかなとか勝手に妄想中。
ともあれ、事件もひと段落着いたけど、むしろ、ミレーユからしたら、ここからが一番きつかったろうなあ。自分が取った行動から、リヒャルトとの間に溝ができてしまったことを悔やむ姿は、わかるだけに可哀想になりましたね。ただ、そんなときでも、相手の心に言葉を届けるところは、さすがです、ミレーユ。彼女の素直さや真っ直ぐさは、リヒャルトにとって自分を正す指針にもなってるでしょうね。
二人をめぐって、王子たちや白百合騎士団の面子が賭けをしていましたが、どんな結果が待ち受けていたかは、読んでからのお楽しみってことで。
いやあ、楽しかった。本物の「伯爵」よりも、偽者の「伯爵」であるミレーユの人気が上昇してる気がしますが、だんだんと正体を知る人が増えてきちゃってますね。シルフレイアぐらいだったらまだしも、彼が疑問を持ち始めたのは、今後まずいような気がするんだけどなあ。
王子とフレッドの狙いが狙いだけに、今後も身代わりとして「伯爵」せざるをえないと思いますが、リヒャルト以外の男が横槍指してこないか、心配ですね。ニヤニヤ。
身代わり伯爵の結婚 (角川ビーンズ文庫 64-2)
清家 未森
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