東方にはソラの求めるものがある。そこへたどり着くために、自身が神になるという妄想に取り付かれた皇帝にソラは追従した。
一方、皇帝の気まぐれから、権力を狭められた光魔法教会は、たとえ犠牲があっても、彼らの動向に問題は無いとして、教主デクストラを献上しようという動きまで出てきた。このままではデクストラに危険が迫ると考えたミリアンは、カナギに内緒で一計を案じたが……
薬師カナギと詩人ソラ、魔導師ミリアン一行が旅する異世界ロードノベルファンタジー……じゃなくなってる気もするけど、三人が主となる物語であることは間違いないですね。というわけで、クライマックス直前の第六作目は、乱心した皇帝が東方へと向かい、カナギとミリアンがそれぞれの立場から動き始めるお話です。
皇帝に対して追従する姿を見たときには、ソラが何を考えているのかさっぱりでしたが、カナギを夢想するところに、心を感じました。ここまで揺れる姿を見れたのは嬉しいですが、もうちょっと周囲の影響を考えてあげてねと言いたくなる。
カナギとミリアンは、ほんと素敵な関係になってたなあ。相手が苦しむかもしれないなら、という思いには、幼いというか拙い思いを感じるけれど、でも、心からの言葉であることがわかるだけに、過激さとは裏腹に、じんわり温かくなりました。ふたりして同じ思いを抱えてるところもほんといいですね。
それにしても、自分がミリアンを失ったらどう思うかなんてわかるだろうに、ミリアンが同じような思いを抱えると考えないあたり、まったく男ってヤツは……と思いました。
その他の人たちの恋愛方面では、リュリュとデクストラがいい感じだったなあ。それだけの努力をしたからこそと思うと、彼の思いが伝わってきます。だからって、イストツクエはないと思うけど!
それより何より、心痛むのは、バシュラールとシュナルの関係でしょう。愛していることを自覚しながら、それでも手を取れない、取ることができないシュナルの思いが、苦しくてたまりません。
相手に届かないところで、初めて口に出したであろう告白に、涙が出そうになりました。
ああ、この二人には幸せを掴んでほしいのに……。どうなるんだろう。
そして最後が凄かった。皇帝どころかソラまで乱心したのかと思いましたが、なるほど、心を持つとはこうも痛いことなのかと思いました。ただひとり、思いを揺らしてくれる存在へ向けた態度には、逆に寂しさが見えて……カナギの台詞が心を打ちます。やっぱり、強いよ、カナギ。この世界の事実には衝撃を受けましたが、それ以上の衝撃がラストに待ち構えているとは思いませんでした。魔物による死は回避出来るかもしれない。だけど、なんて残酷な現実が……
読んでる身からしたら、このヒキで終わることも残酷だと思いましたが、ともあれ、次なる最終巻でどうなっていくのか、楽しみにです。
あ、その前に短編集があったか。こちらも楽しみ。
オペラ・グローリア―讃えよ神なき栄光を
栗原 ちひろ
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