「あたしは、全然立派なお嬢様じゃないけど」
アネットは、立ち上がって彼を見上げた。深く澄んだ灰色の瞳を、正面から見つめる。
「あんたのことは、あたしが守るわ。絶対よ。だから……ここにいて。あんたは、あたしの、執事なんだから」
貧困生活から一転して伯爵家を継ぐことになったアネットが、有能で美形だけどちょっとスパルタな執事リチャードの教えで、お嬢様になるべく頑張るお話の第二弾。今回は、王宮への接見会に向けて、より一層レッスンを励むアネットの前に、元貴族な侍女ブランシュが現れて……というお話。
ブランシュ話はとてもあからさまだったので、気づかぬアネットはどうかと思うんだけど、ま、それだけ人が好いということかな。そういう方面は、ユージンたちに任せておけばいいか。
そんなところはおいといて、お嬢様修行しつつ、元気のよさを忘れないアネットがほんといいなあ。優雅に暮らせない労働者根性にニヤニヤしてしまいますが、そんなアネットにお小言をするリチャードとの掛け合いは、何度みても微笑ましいです。普段きびしいけど、時に甘い言葉を投げかけてくれるリチャードは、無意識かもしれないけど、飴とムチだよね。
甘い言葉といえば、顧問弁護士ユージンも負けてないです。アネットにはからかうようなことばかりですけど、侍女となったブランシュには次から次へと歯が浮くようなことばかり言ってて、読んでるだけでゴロゴロしたくなりました。まあ、そんな感じで、軽薄なイメージの強いユージンですが、ブランシュ話から始まる一連の騒動を解決していくところでは、格好いい姿をみせてくれました。
例の秘密があるが故に話せないことも多いのに、それでもアネットの利益を守るために、悪役を引き受けてくれたり、信頼を見せてくれたり。今回の話だけでいったら、間違いなくユージンになびきますよ(僕の場合)。ううむ、この二人、レベル高いぜ。
ブランシュの行動から、リチャードの過去がさらに見えてきましたが……、なかなかに難しいものがありそうですね。アネットは気にしないだろうけれど、彼女に迷惑をかけないように離れていくことはあるかもしれません。
こうなったらユージンも巻き込んでしまえば、と思うのは軽率かな。この三人がどういう形で屋敷と人を守っていくのか気になりますね。
アネットと秘密の指輪 お嬢様と謎の貴婦人 (角川ビーンズ文庫 52-11)
雨川 恵
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