ユスティニアと再会することができたアレクシードだが、皇太子の動きは早かった。軍によって、アダルシャンへの道を封鎖したのだ。カストリアを離れて、アダルシャンへ戻るために、二人がそばにいるのは危険と判断したアレクは、カジャとユティ、アレクシードとセオの二手に分かれて落ち合うことにしたが……
シリーズ最終巻。再会したふたりが、追っ手から逃れるために、再び分かれて……というお話。せっかく会えたのに……と思わなくもないですが、離れて別々のペアと行動することで、自分の感情との折り合いを付けていくところは、良かったですね。もしカジャの話がなかったら、アレクとの間にギクシャクしたものが残ったかもしれないことを考えると、アレクの代わりに感謝したくなる気持ちでいっぱい。
アレクが迎えた絶体絶命のピンチを乗り切ることができたのは、ユティの頑張りがあったからというのは、嬉しいところですが、もうちょっと、盛り上がりみたいなものがほしかったかなあ。できればそう言うシーンが見たかったです。っていうか、なんだ、あの皇帝は。以前、ユティが父上の話をしてたけど、そのままの人だとは思わなかった。お茶目すぎ。
シリアスなところが、微妙にふにゃふにゃした感じを受けましたが、それでも命を賭けることに変わりはなく、戦を止めるためにアレクが相手と対峙に向かうとき、必ず、帰ってきてほしいという、ユティの必死な思いが伝わってくるリボンのシーンは、素敵だったなあ。
それ以上に良かったのが、ユーゼリクスの言葉です。例の件から離れてしまった弟に対して、ひたすら冷たく思える態度でしたが、反逆者に対して向ける強い言葉が、実はアレクに向かって告げているところに、不器用な優しさを感じます。最後まで弟に対してデレることはなかったですが、そんなお兄ちゃんが素晴らしかった。鈍かったアレクも気づけたみたいだし、兄弟揃って良かったねといいたくなります。
いやあ、よかったです。盛り上がりという点ではちょっと欠けるところがありましたが、それを補って余りある優しさと温かさがありました。特に最後の最後。ユティとアレクの関係に、こんなシーンが待ち受けてるとは思いもしませんでしたよ。
どきどきする行為は、好きな人相手だと、もっとドキドキする。そのことに気づいたユティと、初めての行為にドキドキするアレクの、最後の最後で本当の意味で恋に落ちる呪いに悶えました。あー、もっと、このふたりを見ていたいと、どれほど思ったことか。ふたりとも、末永くお幸せに。
イシュターナの祝鐘
雨川 恵
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