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[雨川恵] ユスティニアの花束

ユスティニアがアダルシャンに嫁ぐ前、彼女の騎士ナナとの約束を描いた「花の約束」やフレッドとアレクの出会いを描いた「ひだまりの誓約」、おにいちゃんと呼ぶアレクとユーゼリクスの「孤影の光」など、シリアスでも心は温かに系のお話と、アレクやフラッドたちがユスティニアに振り回される「未来の花嫁」「真夜中の秘密」などのほのぼのしてコミカルな日常系の7編からなる短編集です。

いやあ、いいですね。こういう心温まるお話大好き。今まで名前は良く出てきてたナナのお話が読めたのは、結構嬉しかったなあ。ユティへの接し方が、何となく始めのほうのアレクっぽいのは、見守るという姿勢が共通だからかしら。騎士としての役目のために、側を離れるときの気持ちは、後悔も見えるところがありましたが、ユティ本当に彼のことを思っていたことが伝わってくる贈り物のシーンでじわりときました。苦手だと散々言っていたのに……。戦がなければ、アレクとユティが出会うことはなかったですが、思わず、たら、ればを想像してしまう「花の約束」でした。

この短編集では、ユティかわいいよユティ、というが一番言いたいことですが、実はアレクも子供の頃は、すんごいかわいいんですよね。ユーゼリクスが、始めはアレクのことを羨むというか憎むような姿勢だったのは意外でしたが、「おにいちゃん」という呼びかけから心許し始める「孤影の光」や、あどけないアレクの感謝気持ちから、フラッドが心救われる「ひだまりの誓約」を読んでそう思いました。いや、でも、子供アレクを見ていたら、守ってあげたいと思うのもわかります。フラッドやユーゼリクスがアレクに向ける感情って、アレクがユティに向ける感情に似てるんじゃないかなあとか思い始めてきた。
おにいちゃんたるユーゼリクスの愛情が、アレクに伝わらない「てのひらの記憶」には、思わず吹いたのは内緒。でも、そんなユーゼリクスの不器用な優しさが大好き。

でもやっぱり面白いのは、ユティが出てくるお話で。

貴婦人を目指すユティが、かいがいしくアレクの世話をしようと頑張る「未来の花嫁」は、振り回される大人たちの様子が楽しくて楽しくて。無茶なことをやりすぎたので、お怒りになったアレクでしたが、彼女のどんな想いで行動したかを知ってしまったら、何もいえませんよね。アレクの甘さに、にんまりです。

個人的に一番好きなお話は、「真夜中の秘密」かな。眠れぬユティが、暗いところにひとりでいるのが怖くて、フラッドを寝室に連れ込むお話ですが、アレクの代わりに夫婦の務めをしろとユティ言われて、ドキッとするフラッドが笑えます。

恥ずかしげもなく、いろいろなことを口にするユティのおかげで、主が妻とどんな夜を過ごしているのか、いろいろ知ってしまったフラッドですが、むしろ当てられたんじゃないかなあ。最後、アレクの腕の中で眠るユティの姿に、大いなる親愛を感じました。

最後の話「ホーム・スイート・ホーム」がまた素晴らしく温かくなれて。誰がどう見たってアレクのために何かを頑張ってるのに、ユティが避けてると勘違いするアレクにヤレヤレと思いましたが、不安があっただけに、ユティの行動には、嬉しさもひとしおだったろうなあ。
何で急にそんなことを思い立ったんだろうとは思ったけど、なるほど、アゼリアの裏方的存在感は健在ですね。アゼリアの好意を喜びつつ、ちょっとした感情を持ったユティの姿に驚きです。子供だ子供だと思ってましたが、嫉妬を覚えるようになってきたら、これは素敵に恋じゃないですか。
お互いの思いが育まれていく様子が見えてくると、ほんと嬉しくなっちゃいますね。

ああ、良かった。ユティとアレクの微笑ましき愛情をたっぷり堪能させていただきました。こうなってくると、最終巻でどういう結末を迎えるのか、楽しみになってきますね。素敵なハッピーエンドを迎えてくれるといいな。

ユスティニアの花束 - 雨川 恵

ユスティニアの花束
雨川 恵

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