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[榎田ユウリ] 宮廷神官物語 渇きの王都は雨を待つ

「よくない知らせだ」
王子は文から目を上げて言った。
「天青が何者かに拐かされた。一夜経ったが、まだ見つかっていない」

人の悪しき心魂を看破する慧眼児の持ち主であるお子様の天青と、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた青年の鶏冠が、宮廷内での交流を深めていくお話の第三弾。今回は、王都が水不足に悩む中、町へ出かけた天青が誘拐されて行方不明になったと思ったら、大国・淘国の大使が慧眼児に会わせろと言い出して……という話。

ああ、こうやって成長していくんだなあ。
元気良すぎてあれこれ町を探索している間に、誘拐されてしまうところが、なんとも天青らしいですが、町の人たちの様子から、それまで深刻に考えていなかった水不足という問題を認識していくのを見ると、決して悪い出来事ではなかったと思います。まあ、無事だったからいえることですけど。
誘拐されたにもかかわらず、町の人のために何とかしようと、知恵を働かすところが、とても天青らしい。

そんな天青の状況は知らず、行方不明ってことで心配になった鶏冠が、自分の姿で動けないならと、あれほど嫌がってた女装をしてまで、町を探し歩くんですから、いやはや、天青を思う気持ちが伝わってきますね。
見つけて叱りつけたシーンを見てると、どれだけ大切に思ってるか伝わってきて、天青の涙と一緒にじんわりしちゃう。

外がそういった状況なのに、貴族たちは相変わらずな生活をしていて、そこをなんとかしようとする王子と、うるさい王子をだまらせようとする貴族とが、いろいろ謀略を練りあってるのはいつもどおりなんですが、王子に気に入られていることで、何かと狙い撃ちされる鶏冠が哀れでしょうがない。

といいつつも、個人的にはもうちょっとドロドロあってくれるとうれしいんだけどなあという思いはともかくとして、一番印象に残ったのは、逃げることもできず、さりとて立場上逆らうこともできない鶏冠が、雨乞いの儀という死と隣り合わせの儀式を行わねばならなかったときのシーンですね。自身が倒れそうになりながらも、民のためを思い、そして何より天青のためを思って見せた笑顔に、彼の心の強さを感じました。

いやあ、面白かった。急展開とかそういうんじゃないんだけど、天青と鶏冠が二人で過ごすときの雰囲気に安らぎを感じて、こちらまで愛しい気持ちになれます。
今後も、いろいろ気に食わない輩が、何かと手を出してくるでしょうけれど、この二人の信頼関係を壊すことはできないだろうなと、そう思いました。

さて、裏でまたきな臭い動きがあるようですが、次は何がおきるのか楽しみですね。

宮廷神官物語  渇きの王都は雨を待つ (角川ビーンズ文庫 (BB39-6)) - 榎田 ユウリ

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