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[榎田ユウリ] 宮廷神官物語 少年は学舎を翔ける

王宮に来てから二週間。天青は、いよいよ神官書生として、学舎へ赴くこととなった。宮廷内では天青に手を差し伸べられない鶏冠は、ほとんどが貴族で固められる学舎で起こる騒動を懸念していたが、そんな親心(?)を天青は気にしない。そして鶏冠の懸念は現実となった。身分を重んじる書生たちは、徒党を組んで天青に嫌がらせを仕掛けてきたのだ。
姑息な嫌がらせを受けても、負けるもんかと乗り切っていた天青だが、あるとき、天青の言葉よりも、いじめを仕掛けてきている笙玲の言葉を、鶏冠が信じたことにショックを受けて……

人の悪しき心魂を看破する慧眼児の持ち主たる天青と、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた鶏冠が、宮廷内で交流を深めていくお話の第二弾。今回は、天青が学舎へ足を踏み入れたら、同級生たちの嫌がらせが待ち受けていて、というお話。

能力ある新人がいじめられるとは、オーソドックスではありますが、いじめ問題よりも、それを受けての天青と鶏冠の間に見える思いが、なんともいじらしい。

贔屓していると思われないよう、厳しくあたりながら、裏では、天青のために、温かい食事やら毛布を差し入れたりするあたりが、鶏冠らしい不器用さを感じますね。曹鉄を介して差し入れするので、天青からは感謝されないとは、何とも貧乏くじでやるせないですが、それでも、たとえ天青に良く思われなくても、彼を守るためならと行動する姿が好きだなあ。

一方の天青は、いじめよりも、鶏冠がかまってくれないことに膨れてましたけど、鶏冠にも事情があるんだよ、とはさすがに察せないよなあ。このあたりのすれ違いに、やきもきです。それでも荒まなかったのは、曹鉄と、何より子虎の温かさがあったからでしょうね。寒さに震える夜に、ぬくもりを与えてくれた子虎に、グッジョブ!

とまあ、学舎でいろいろあるうちに、宮廷内では、十二年前に、側室の延殊の処刑されたのは、実は聡明な延殊を疎んだ貴族たちの罠だったのではないか、という問題が浮かび上がってきて、藍晶王子や鶏冠が調査を始めるうちに、延殊の娘・櫻嵐と出会うんですが……、何この格好よさ。姫とか弱さがまるでなく、生き延びてきたものとしての強さに痺れまくりです。この人には、今後もぜひとも活躍してほしいなあ、なんて思ったり。

いやあ、面白かった。慧眼児としての恐ろしさを始めて実感した天青を、親愛で包んだ鶏冠の温かさがとても素敵でした。孤独になどさせない、と言い切った鶏冠の言葉が、胸に沁みいります。立場を考えると、今後もすれ違うことはあるだろうけれど、この温かさがあれば、きっと大丈夫でしょうね。
いつの間にか、書生たちが、天青色に染まってるところに、頬が緩んで仕方ない。

宮廷神官物語少年は学舎を翔ける (角川ビーンズ文庫 39-5) - 榎田 ユウリ

宮廷神官物語少年は学舎を翔ける
榎田 ユウリ

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