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[榎田ユウリ] 宮廷神官物語 選ばれし瞳の少年

天におわす神が遣わす者というという慧眼児がいるという噂を確かめるために、神官である鶏冠が、空気と眺めばかりはいい田舎のハシバミの村へと向かっていった。ところが出会ってみれば、天青と名乗る少年は、可愛げのまるでない子供だった。本当に、慧眼児かと疑問を覚えながら、鶏冠が王の元へ連れて行くべく、村を出ようとしたら、鶏冠の護衛官が刃を振り上げて……

神話の子供たち」で極上のファンタジーを魅せてくれた榎田尤利さんが、榎田ユウリと名を改めて、新たな物語を届けてくれました。

人の悪しき心魂を看破する眼―額に目を持つという慧眼児の噂を聞きつけて、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた鶏冠が、田舎の村で慧眼児かも?という悪ガキの天青と、彼を守ろうとする曹鉄と共に、都へと向かったら、彼らを狙うものが現れて……というところから始まる中華風ファンタジーですね。

禁欲が美徳とされ、感情すら高ぶらさないことを求められる神官なのに、女みたい、と言われると、青筋を立てて迫ってくる鶏冠と、小生意気だけど、打ち解けてくると素直な可愛げのある王青の軽快なやり取りが楽しいです。

周りからだと、仲の良い兄弟みたいに見えるじゃれあいでしたが、内面でもだんだんと打ち解けていく様が見えましたよね。お高く留まっているかのようで、王青のために体を張った行動を取る鶏冠の姿や、他人のために思い切った行動を取れる王青の姿は、お互い感じるものがあったんだろうなあ。

危険こそあるけれど、意外な出来事があったり、驚きの発見があったりと、楽しい旅路だったんですが、田舎村の外の世界には、楽しいことばかりでなく、身分の違いという現実が描かれるところは、辛いものがありました。
母なるものが、娘を守るために命を賭け、命を奪ったものは、身分の高さから罪の意識ひとつなく過ごす。
ただ耐えるしかない者たち、絶望にとらわれていた娘を見るのは、悲しみと怒りがない交ぜになる思いでしたが、激情を沈め、人々の思いを救った鶏冠の言葉は、心に響くものがありました。こういう繊細な描写は、やはり素敵です。

王子が何たる人だとかいうところは置いといて、大神官になろうとする者たちの私利私欲に満ちた陰謀から、絶体絶命のピンチに陥ったときに、天青が感じた苦しさは、何ともいえないものがありました。自分の身でなく、自分を必要だと言ってくれた人が倒れてるんですから。

それでも、まっすぐに見つめた瞳があったからこそ、最後の壮大なシーンが生まれたんだろうなあ。涙がキーとなるのは、王道ではありますが、心に染み入るものがありました。
っていうか、柘榴婆は全部知ってたんだろうなあ。初っ端の登場のときも、欲深に見せかけて、天青を大切にしてるっぽい感じがあったので、良いキャラしてるなと思ってたんですが、いやはや、侮れないったらありゃしない。

いやあ、面白かった。いつの間にか、天青と鶏冠の間に芽生えていた絆の強さが素敵でした。ひとまず、例の件についてはお預けなものの、どうやら宮廷で共に過ごすことが認められたようなので、これから天青がどんな騒動を引き起こして、鶏冠がどうフォローしていくのか楽しみです。

いつの間にやら天青についてきて、子虎と名づけられた小さい虎が、何気に好きなんですけど、次はちょっとやんちゃになってくれてると嬉しいなー。

宮廷神官物語―選ばれし瞳の少年 (角川ビーンズ文庫 39-4) - 榎田 ユウリ

宮廷神官物語―選ばれし瞳の少年
榎田 ユウリ

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