「逃げてもムダよ。何をしても、もう止まらないの」
讃える信徒たちを見下ろしながら、環は微笑した。
「たかがウソが、どれだけ大きい力を持ってるか……見せてあげる」
幼馴染のカノンと守るために、環がついた「虫を消す力」という嘘は、救いを求める虫憑きたちの心を射止めた。幼馴染を守るために、嘘を重ねていくうちに、ついには大きな集団となって……いつしか神と崇められたカノンと、ハルキヨや詩歌たちが激突するお話です。
どれほど力があろうとも、あるいはどれほど力がなくとも。虫という存在は、少年少女にとって、どれほど必要ないものなのかが伝わってきます。「虫を消す」という力について、嘘かもしれないと思いながらも、信じたいが故に付き従ってしまうのですから。
心を痛めながらも、皆と一緒にいるには嘘を重ねて行くしかなく、その嘘が、こんなにも他のところを引っ掻き回していくとは……いや、引っ掻き回したのは、環のせいだけど、同じ未来を目指しているはずなのに、むしばねを相手取ることになる展開は、やるせないものがありました。
個人的に印象的だったことは、ハルキヨの言葉でした。一号指定は殺せない ― 何を言ってるのかと思ったけれど、考えてみたら、なるほどと思わされる。たしかにレイディ・バードはいないかもしれない。けれど、いまだにむしばねはいて、その存在感の大きさを実感させるならば、彼の言ってることは正しい。そして、虫憑きでなくとも、カノンも同様の存在と言っていいんじゃないかしら。
聖戦と称した戦いに立ち向かう聖者の覚悟は、でもやっぱり少年と少女のお話で。切ないうえに、皮肉な展開を迎えることになりましたが、これは大きなきっかけになる気がします。ここからクライマックスにむけて、どんな展開が待ち受けているのか楽しみでなりません。
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岩井 恭平
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