小学生で最後の冬休みを迎えた詩歌は、丸いサングラスをかけた女の人と出会った。
―ねえ、貴女の夢をきかせてくれない?
自らの夢を口にしてしまった代償はあまりにも大きかった。
やがて、特環は彼女を〝ふゆほたる〟と名づけ、追い始めたが、その中には、初めて任務を迎えた小学生〝かっこう〟の姿も……
小学生だった詩歌が〝ふゆほたる〟となり〝かっこう〟と対峙する「夢の始まり」と、立花利菜が虫憑きとなった「夢の黄昏」の二編からなるお話です。
これは……辛いお話ですね。まだ小学生だというのに、虫憑きの力によって、周囲の目が変わってしまうのは、特に親、姉妹の視線に拒絶が含まれていたら、絶望に囚われてしまうのもわかります。
そんな彼女の気持ちと同じように、特環に所属している虫憑きも、悲鳴を上げていたということがわかるクーデター問題は、心苦しい限りでした。
なぜ、夢を持って、同じ境遇になったものたちが争わねばならないのか。〝かっこう〟の言葉が胸に突き刺さりましたが、それでも、止まらないのは、限界まで追い詰められていたからなんだろうなあ。迫害の恐ろしさが伝わってきます。
このままだったら詩歌も、精神的にやられたかもしれませんが、彼女を追ってきた特環の火種三種〝なみえ〟の言葉は、自分に向けての言葉でもあったと思うけど、詩歌の心を救ってくれましたね。逆に詩歌の存在が〝なみえ〟を救ってくれて、このあたりのやり取りは、心に残るものがありました。
最後にようやく〝かっこう〟と対峙した〝ふゆほたる〟ですが、もう切なさで胸が張り裂けそうになりましたね。引き金を引く前のやり取りは、きっと〝かっこう〟のその後の大きな進路となったんじゃないかしら。ああ、詩歌……。
もうひとつ利菜のお話も、切ないものがありました。誰からも好かれ、誰からも頼られる少女は、家と学校以外の場所を知らず、暴力がはびこる家庭で育ったとは思わなかったです。人助けをすることが趣味のような描写がありましたが、むしろ、外へ意識を飛ばさないと、心が持たなかったんでしょうね。
人助けの最中、虫憑きと出会うことになって、しかも三人の虫憑きと出会い、ただの人であった頃に、救いをもたらしたあたりでは、後のレイディー・バードの片鱗を見せ付けられました。
でも、やっぱり、中身はただの女の子で。
誰からも好かれ、誰からも頼られる利菜が、嫌われることはなくとも、誰からも相手にされていなかった詩歌と、同じ夢を見ていたというのが、印象的です。
すでに行く末がわかっているため、切なさに襲われるばかりですが、二人の少女の夢の始まりは、前を向くお話だったことがわかって良かったです。
ムシウタ 00.夢の始まり
岩井 恭平
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