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[岩井恭平] ムシウタbug 5th.夢まどろむ迷子

特環から〝かなかな〟こと宇野ノイルが派遣されてきた。亜梨子の〝槍型〟の号指定を監査するために。特に危険がないのならと許諾したが、先日の事件が、抜けない棘となって胸に突き刺さっている亜梨子には、虫憑きに対して迷いが生じていた。
そんなとき、未登録の虫憑きを捕獲するという任務が大介に与えられ、亜梨子もついていくことになったが、ノイルは不審な動きをはじめ……

という「夢まどろむ迷子」、亜梨子や大助を手伝ってくれる虫憑きを探す「夢操る要請」、宗近が作った物を亜梨子に届ける配達人の「夢届ける配達人」、目が覚めたら摩理の意識が表に出ていた「夢蘇る一日」の四編からなる短編集です。

「優しい魔法使い」の件で、虫憑きたちの人生に衝撃を受けた亜梨子が、虫憑きたち側と日常側の狭間で揺れていましたね。あの気丈な亜梨子が、虫憑きと出会うことに躊躇してしまうほどなんですから、衝撃の大きさがうかがい知れます。頷こうとして頷けない亜梨子の様子には、大助じゃなくても見ていられないものがありました。

戦う理由などないのに、出会えば傷つけ、傷つけられるという虫憑きの関係に関わっていくと、どうなるかわからないと思いながらも、前に進もうとする彼女の思いが素敵でした。頼りになる少年が側にいるからこその思いかもしれませんが、やっぱり亜梨子は強いですね。
彼女の理想がどこまで届くのかは、見届けたいと思わせるものがあります。

個人的に好きな話は「夢蘇る一日」かな。亜梨子に危険が迫ったとき以外、表に出てこれなかった摩理が、目が覚めたときから、なぜか意識を持っていたので、「亜梨子」として一日を過ごすお話です。

普段の暴れん坊姫とは違った様子の「亜梨子」に戸惑う大助の様子が、とても面白く、生身で風を感じたり、走れることに喜ぶ摩理の様子には、微笑ましくもありましたが、これが長く続かないであろうことを思うと、心が痛みましたね。
少しずつ心境が変化してくる嫌な空気には、じわりと手に汗が浮かぶものがありましたが、少なくとも摩理が敵でないことがわかっただけでも、良かったと思います。きっと今日の幸せは、彼女の孤独を潤したんじゃないかなと思える最後が素敵でした。

コミカル要素が減ってしまったのは残念ですが、それを補って余りある面白さでしたね。いろいろ怪しい動きもあったし、モルフォチョウについても新たなものが見えてきたので、どういう結末が待っているのかとても楽しみです。

ムシウタbug 5th. (5) - 岩井 恭平

ムシウタbug 5th. (5)
岩井 恭平

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