「大喰い」との戦いにより、虫を暴走させてしまった「かっこう」こと薬屋大助は、その貴重な戦闘力から、殺されることもなく、シェルターに隔離されていた。だが、もう限界だ。このままでは死ぬことすらできない。衰弱した体に鞭打って施設から脱出した大助だが、体は思うように動かない。そんなとき、大助を保護してくれたのは、便利屋を営むきらりだった。だが、その街では、特環の殲滅班の監視下にあり……
未確認の同化型虫憑きがいる可能性があるとして、特環の監視下にある街に、大助が逃げ込んできて……というお話です。大助が初っ端から出てくるのは、久しぶりな気がしますが、絶望から始まるから驚きました。いったいどうなるんだと、グイグイ引きこまれましたね。
逃げ出したところで体はボロボロ、追っ手はいつくるかわからないという状況で、便利屋のきらりに出会えたことは、まさに運としかいいようがない気がします。いや、これも土師の先見というべきか。 コアトルヘッドというお呪いに、それほどの思いが込められていたとは思いませんでしたが、決して弱音を人に見せず、意思を継ぐことを貫く彼女は、ほんと素敵でした。
それにしても哀しいのは、虫憑きの運命ですね。会いたい人がいる。それだけが願いだったのに、戦わざるをえない現実は、何ともやり切れないものがあります。それでも、救われた人がいたのは良かったのかなあ。
思わず涙がこぼれますが、ただ、胸に来る重さがいつもほどじゃなかったかな。大きなトリックが仕掛けられていたせいか、微妙な心理描写が少なかったせいかも。この物語だったら、もっと泣かせてくれそうだっただけに、残念な気がしないでもない。
個人的に印象的だったのは、特環の暗殺者にして、教師である耶麻本ラウですね。相談に来る生徒たちをうざいと思いながら、的確にアドバイスする姿もさることながら、教えたことを生徒が覚えていたときに嬉しく思う様は、自分の思いとは裏腹に教師でしたね。
「私の授業を、ちゃんと聞いていたんじゃないか ―」
この言葉を発したときの嬉しさがわかるだけに、そのあと襲われる葛藤には、心が苦しくなりました。いろいろなものを抱えてる人なだけに、この人をメインにした話とかになっても、面白かったかもしれない。
まあ、今回の物語は、大介が最後の戦いへと向かうためのスタートラインに立つためのお話だったんじゃないかな。今までバラバラに語られていたキャラたちが集結し始めたことですし、今後どうなるのか、楽しみですね。
ムシウタ 8 (8)
岩井 恭平
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