「あなたには、生まれついての才能があるのよ。人を殺す才能。生き残る才能。暗殺者としての才能が」
「はは……、わけの解らないこと言わないでくれよ。大体、何の根拠があって……」
「わたしを殺そうとしたじゃない」
マフィアの最高の殺し屋を示す「ファントム」と呼ばれる少女・アインの殺人現場を目撃したことで、これまでの記憶を奪われ、暗殺術を叩き込まれてファントムになっていく少年・ツヴァイの物語です。
これは何ともやるせないお話だなあ。
生きるため。そう言い訳をしながら人を殺していくあたりは、ただ流されているだけのように思えましたが、共に任務をこなすアインに対して、少なからぬ感情を持ち始めてから、彼の強さが見えてきた気がします。
組織内で起こる抗争からふたりが孤立したとき、たとえ悪役となってでも、アインを……と思った彼の思いが、ね。それだけに、名を継ぐことになったところは辛かった。
心に傷を追いながら、それでも彼がファントムを続けていたのは、ちょっと意外でしたが、もしかしたらアインを……と思ったのは、自分とアインの関係と似たような関係を作ったからです。偶然ではあったけれど、殺人現場で拾った少女から、アインを連想しなかったとは思わない。庇おうと思ったのは、気に入ったと言うこともあったけれど、こんどこそ守りたいという思いもあったんじゃないかな。考えすぎかも知れないけど。
というか、このお話は、人の心の中があまり見えないので、そのあたりが残念です。一冊で終わらせるために、いろいろ削ったんじゃないかと思ってしまうのは僕だけかしら。スピード感のあるアクションと、テンポよく進む展開は引き込まれるし、先がどうなるのかとワクワクさせてくれるから面白いんだけど、読み終わったとき、ちょっと物足りなくも思ってしまいます。
特にラストの選択とか、クロウディアの思いとかは、もっと見せて欲しかった。
ファントム―アイン (角川スニーカー文庫)
虚淵 玄 リアクション
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