「今さらだな。≪公館≫は常に危機の中にあった。戦後六十年、公館本館は、横田だの厚木だの米軍基地に囲まれているからな」
「そうなのでしょう。ですが、魔法世界にかかわるこれら勢力が全力で衝突すれば― 」
京香は、その事実を戦闘指揮者として噛みしめる。
「 ―最初に滅びるのは、私たちです」
これはすごかった!序盤の運動会の平和な日常が一転して、どんどんと非日常な、それも殺伐とした方面に話が進んでいくところには、心痛むものがあって、しかも、援護のない仁は、ある意味、たったひとりで戦わねばならないんだから、どうするんだよとハラハラどきどきの連続でした。
戦いの絶望感もさることながら、心にグサっとくるのは、きずなとの間に見える感情の揺れですね。好意はある。でもそれは罪悪感が伴うもので、告げることができないからこそ、側にいたという状況が、泥沼のように展開していく様は、どちらの気持ちもわかるだけに、つらいものがありました。
まあ、はっきりしない仁が悪いとは思うんだけど、でも、そんな仁を追いかけるメイゼルが格好よかったなあ。過去ばかり見ていたきずなと仁とは対照的に、未来を見ようとするメイゼルの言葉は、とても印象的でしたね。ああ、やっぱり、このサドな少女は、誇り高いんだなあと惚れ惚れする。
メイゼルだけでなく、女性陣は、強くて格好良かったですよねぇ。人あらざる者たちを相手にして、時に自分を殺し、でもどこか情を持ちながら、最善の道を探そうとする京香には、頼むから生き延びてくれと祈りたくなるものがありましたし、何より、心にきたのは、エレオノールの存在でした。
神聖騎士団を離れたにもかかわらず、信じるもののために戦う姿には、鳥肌が立つほど震えるものがあって……祈りながら戦う歌姫の姿に、涙が出そうになりましたよ。
そんな中、迎えた終盤の戦闘シーンは、ほんと圧巻!
いや、それまでのところでも、戦いになったら絶望的なまでにピンチだったけど、比べ物にならないほどで。読んでるだけで圧力を感じるほどの圧倒的戦力差でしたけど、足を震わせながら、仁が立ち続けることができたのは、メイゼルという存在がいたからですよねぇ。このときのふたりのやり取りからみえる関係が、ほんと素敵でした。
いやあ、面白かった!圧倒的なスケールで描かれる物語に引き込まれまくりでした。
しかも、騎士団との戦いは、まだ終わったわけじゃないですからねぇ。
例のアレが残っているし、何より、京香姉ちゃんの行く末がどうなっているのか気になるだけに、続きがとても楽しみです。
円環少女 (8)裏切りの天秤
長谷 敏司
角川グループパブリッシング(文庫)
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