八月十三日の朝、王子護ハウゼンの新しい教え子の狙撃により、仁とメイゼルの楽しくもつらい日々は終わりを告げた。メイゼルと、王子護にさらわれたきずなを助けるために、仁は地下都市へ向かう決意をしたが、それは同時に「公館」の戦場から離れることを意味していた。
そして、仁の戦線離脱を知らされた公館の十崎京香は、おさななじみとしての感情を抑え、処罰のために、鬼火と茨姫のふたりの専任係官を向かわせて……
東京の地下を縦横する核を奪還するために動いていた仁が、メイゼルを助けるために、「公館」へと反旗を翻すお話です。
すごい。圧巻です。四巻、五巻と続いてきた東京地下戦争編の完結編ですが、前作の時点で、これ以上ない重みを見せていたのに、さらに大きな痛みを抱えていくことになるとは、思ってもいませんでしたよ。
「公館」を離れることになっても、仁なら……なんて思っていた自分の甘さを痛感しました。昨日の仲間が今日の敵となる展開には、心が痛くなる暇すら与えてくれませんでしたね。初っ端から<鬼火>たる東郷を相手取ることになり、覚悟の違いを見せ付けられて、追い詰められる様には、仁の弱さを思います。このあたりが、良くも悪くもってところなんでしょうけれど、それでも、メイゼルのために、泥をすすりながらも、立ち上がり続けた姿は、心を動かされるものがありました。
それですら、絶望への一歩にしか過ぎないなんて、誰が考えただろう。
あのとき、手を伸ばせば届くところにいる少女に、かけた言葉が、返された言葉が、これほど、心に痛く響くとは思いもしませんでした。わかっていても、彼女の言葉は、胸に突き刺さるものがありました。これはさすがの仁も、心が折れるんじゃ……と心配になりましたが、きずなという護らねばならない存在が側にいてくれたことは、言葉悪いですが、代替としてありがたかったのかもしれません。
全体的に重苦しい空気が流れていましたが、そんなとき、瑞希が見せてくれた姿は、心安らぐものがあったなあ。きずなを心配するあまり、「かーえーせー!」と仁を攻めるところは、あまりの可愛さに笑ってしまいましたよ。
まあ、ふざけてるところもありましたが、仁の境遇を知りながらも、専任係官として、ぎりぎりのところで、手助けしてくれたことは、うれしかったなあ。直感だけで動くように思えるけど、いや、実際そうなんだろうけれど、仲間意識ももってくれるようになってくれたのかな。彼女にとって、きずなと出会えたのは良かったと、改めて思う。
それにしても、今回の戦闘シーンは圧倒されるものばかりでしたね。茨姫との戦いには、仲間だったが故の駆け引きを存分に見せられたので、死の不安よりも、わくわくするものを感じましたが、王子護との戦いには、逆に恐怖しか見えませんでした。
何一つ打つ手がない……という仁を救ってくれたのが、メイゼルの言葉と、地下で知り合ったばかりの、それでいて仁が守りたかった子供たちの声だというところに、感動です。
仁だけじゃなく、テロリストの国城田の時代遅れながら「悪」と戦い続けようとする姿や、聖騎士と同じものを目指しながら、別の道を歩み始めるエレオノールの思いなど、どこを読んでも、ドラマが待ち受けてるんですから、物語の濃さは半端じゃなかったですね。悪とは何かと問い続けるお話に大満足。
いやあ、面白かった。
例の嘆願書もあるし、ひょっとしたら……という甘い思いは、再び崩されたんですが、それでも仁が守ろうとした平和な姿を見ることができたエピローグに、グッとさせられました。
この安らぎは長く続かないとはわかっていますが、それでも、明るい未来が待ち受けてくれますようにと、願わずにいられません。
円環少女 6 (6)
長谷 敏司
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