「……これこそ彼方中原において、帝国との戦を左右するものとしてその行方が取りざたされている神器、聖魔杯……その伝説を蘇らせるための鍵となる紋章なのです」
観衆の間を、驚愕のどよめきが駆け抜ける。パリエル自身も無論その一人だった。
「そんなっ……まさか!」
「……そうか。なるほど、そのとおりだ。面と向かって確認を取る必要はなかったわけだ。……やられたな」
暴力を極端に嫌うぐーたらおちゃらけ王子のマヒロが、戦わずして敵を退けるかということに尽力を尽くす戦記ものシリーズの第三弾。今回は聖魔杯の紋章を発見したというヴェロニカ同盟の元へ一行が向かったら、紋章がキャラバンレースの優勝商品にされていて……というお話。
裏方に回ったおかげで、マヒロの活躍はかなり地味だったと思うけど、敵がいい感じにクセ者であってくれたので(紋章をキャラバンレースの賞品とするんですから!)、駆け引きが面白かった。ポン!と膝を打つような逆転劇はなかったけれど、常に相手の一歩先を読むような展開は、気づかされたときに、ゾクっとくるものがありますね。
今回は、いろいろな人が決意をしたお話でもあったと思います。伯父の傀儡であった若干十二歳の当主チカが、ヴェロニカの理念を叫んだシーンは、もし目の前でやられてたら、思わず膝をついて忠誠を誓いそうなものがありました。その後の「真実」を聞いたときは、恐ろしいと思ったけど。
あと、これまで活躍度がイマイチだったパリエルも、力の片鱗を見せてくれましたね。彼女もまた覚悟を決めた人の一人でしたが、さて、この力は今後どこまで伸びていくのか気になるところ。
いやあ、面白かった。
最後のほうなんて、話し合いで物語が進んでいくのに、レースより興奮の展開でしたからね。ぎりぎりまで追い詰められてからの大逆転劇にニヤリです。
しっかし、敵に塩を送るとは、マヒロは何を考えているんだろう。第一皇女は楽しむ余裕があるみたいだけど、いつか歯軋りに変わったりするのかしら。このあたりの動向がとても気になります。
ミスマルカ興国物語 III (角川スニーカー文庫 150-22)
林 トモアキ
角川グループパブリッシング(文庫)
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それにしても、エーデルワイス。あなたって人はどこまで完璧なんですか……。力があるのに、必要とあらば他人の名声すら利用する手腕には惚れ惚れしました。
できれば、もうちょっとハジけてくれたらと思ったりするんですが、彼女が動いたら、物語がすぐ終わっちゃうか。
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