「この世に在らざるべき幻書……ですか。そんなものをいったいどこから……」
レズリーが呆れたように微笑んだ。
「愚問でしたね……あなた方はダンタリアンの書架の持ち主なのだから。九十万と六百六十六の幻書を収めた幻の図書館の姫と、その門衛―」
知識と書物をつかさどる悪魔の名を冠した幻の図書館「ダンタリアンの書架」を受け継いだ者たちが、この世に本来あってはならない封印された書物―幻書と幻書を手にしたものを、「ダンタリアンの書架」を引き継いだ青年ヒューイと黒衣の美少女ダリアンが追っていく連作短編です。
これは面白かった。幻書を手にしたからといって必ず悪いことが起こるわけではなく、むしろ力になろうとダリアンたちが幻書を貸し出すこともあるんですが、そのときは相応しい資格を持っていたのに、時が経つにつれて……というのは、やるせないものがありますね。思いも願いも同じはずなのに、どこでずれたのか。
相応しくないものが幻書を手にすることもあるんですが、幻書にかかわった人たちの話は、切なく、時にゾクっとさせられるものがあります。
個人的には第一話の「美食礼賛」が好きだなあ。美食を追及した人が、最高の料理に出会ったときの真実は、実にエグくて実に甘美で。最後の笑顔にゾクゾクさせられるものがありました。この一編だけで僕としては惚れまくりです。
お話もいいですが、この幻書を追うヒューイとダリアンの掛け合いがまた魅力的なんだ。特に「ダンタリアンの書架」としての存在であるダリアンの可愛さといったら!人見知りしまくりで、初対面の人と会うと必ずヒューイの影に隠れるくせに、食べ物には釣られて、「何をもたもたしてやがりますか」と引っ張っていく姿が、とても微笑ましい。小生意気……というか、見た目が幼いこともあって背伸びしているようにも見える罵倒の数々は、僕の脳内では翠星石ボイスで再生されてたのは内緒。
どうやら、人あらざるものは、迷宮図書館と呼ばれる「ダンタリアンの書架」だけでなく、幻書に惑わされたものを裁く焚書官なる人もいるみたいですね。幻書をめぐるお話とはいえ、当事者とダリアンたちの間には、どこか傍観者的な距離感がありましたが、焚書官とはいずれ直接的なやり取りがありそうな気もするので、そこへたどり着くまでの道のりにワクワクどきどきです。
ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫 123-21)
三雲 岳斗
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- 前回の本の紹介が漫画でしたから、次は小説の紹介をします。 紹介するのは三雲岳斗先生の新作「ダンタリアンの書架」です。








