岬美由紀二尉が今回の事態を引き起こしたのは、二年前の両親の死がトラウマとなっているからである ― 自分のやったことも重大さはわかっているが、トラウマという言葉で事態を収束させようとする精神科医、笹島の発言に反発した美由紀は、自衛隊幹部候補の道を自ら外れ、臨床心理士を目指し始めて……
航空自衛隊初の女性戦闘機パイロットだった美由紀が、臨床心理士を目指すことになってから、千里眼と呼ばれるようになるまでのお話です。というと、今までシリーズを呼んできた人にとっては、知ってることばかりのようですが、実際そうではあるものの、新しい話なので普通に面白いです。
パイロット時代に鍛えた動体視力を活用した表情筋の観察力により、相手の考えていることがほとんどわかってしまうという千里眼の孤独は、学び始めたころからあったのかと驚きました。そりゃ、目の前にいる人は、ちょっとした表情から自分の心理状態を完全に把握してしまうと言われたら、近寄りがたいですよね。
友人だと思っていた人は目の前からいなくなり、同じ臨床心理士を目指す人は嫉妬して離れていくという、努力したが故の孤独というのは、何とも辛いものがあります。
そんな美由紀が唯一読めない感情が、男性の持つ女性への思いというのは、何とも微笑ましいような、寂しいような、そんな気持ちになりました。熱中すると周囲が見えなくなるのは、自衛隊に入る過程を見ても明らかですが、そのころは、相手の気持ちよりも自分の気持ちのほうが大きかったんでしょうね。
男性の心理に気づかないところに思わずニヤリとさせられてしまいましたが、そのことに気づいていく過程には、さらにニヤニヤです。
後半は千里眼シリーズお得意のジェットコースター展開でした。旅客機の墜落を止めるため、独走暴走していく美由紀の姿は、いつもながら見ごたえがあります。自分がやらなきゃ誰がやるという美由紀の心理状態は、微妙に好きになれなかったりしますが、その最速の判断と行動があったからこその救助劇を見ていると、まあいいかという気にもなったり。
人の気持ちに対して、またひとつ階段を上る千里眼と、その千里眼を怪しい組織が包み始めるという幕は、続編への興味をそそりますね。
そうそう。ひとつ以前のシリーズと異なるのは、テクニックがより現実に近づいたところです。目線の動きから心理状態を把握することは、実際にはありえないとか、トラウマの問題なども現在正しいとされている手法に合わせているとか。
ハッタリ風味だったところが、リアリティを増してくると、また別の面白さがありそうですね。
千里眼The Start
松岡 圭祐
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- 岬美由紀の新たなる伝説の序章と云うべき章です。自衛隊時代の話から、現在にストーリーを持っていき話を展開させるパターンですが後の巻にも話が繋がっていますね。








