飛び込み台から突き出したコンクリートの先端に立ったとき、知季はいつも深い後悔の念に襲われる。こんな高さから飛び込むなんてばかげている。だが、成功したときの快感に囚われてしまった今となっては、やめることができない。
そんな知季の通っているダイビングスクールは、今、経営難に陥っているらしい。スポンサーであるミズキの社員が見学に来ていたとき、思わず知季は口にしてしまった。うちのクラブをつぶしに来たのか、と。
その女性の返事は明快だった。
「つぶしに来たんじゃないわ。守りに来たのよ」
経営不振のダイビングスクールが存続するためには、オリンピックの代表権が必要ということで、メンバーが一丸となって、オリンピックを目指すという物語。
高さ十メートルからの飛翔。
時速六十キロの急降下。
わずか 1.4秒の空中演技。
飛び込み選手たちのお話がこれほどまでに熱い物語になるとは思いませんでした。
ルールさえ知らなかったことを恥じる気持ちでいっぱい。
中学生の要一と高校生の飛沫。この二人が主役といって良いでしょう。飛び込みだけの毎日。ひとつのことに打ち込むために、すべてを犠牲にする毎日。
挫折、失恋、故障。オリンピックを目指す人なら、誰もが同じような経験をするのは想像に難くない。周囲の人との差から、今やっていることが何になるのかと迷う姿に共感させられました。
それでも、悩みながら、少しずつ前を向こうとする少年二人の葛藤がとても良かった。祖父の夢とクラブのために、選手をオリンピックに導こうとする夏陽子も素敵。己の壁に立ち向かい、飛び込むシーンに心が震えます。
お互いがライバルでありながら認め合う存在。いいですよね、こういう関係。ふたりだけじゃなく、登場人物みながとても魅力的。
物語はまだ半分。最後の最後に、大人の思惑が見え隠れする展開が待ち受けていましたが、いったいどうなるのか。とりあえずの目標を超えているだけに、今後の展開が気になって仕方ありません。
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