「わからないな。生産の世界でも、集約化と効率化が進んでるんじゃないの?」
「進んでる。そして、作り手が殺されてる。みんな、生産を、製品の面だけから見ている。創作意欲という面からは、誰一人見ようとしないんだ。それが人間の一番の楽しみなのに」
十二歳のとき、父の工場がつぶされたことを受けて、生産性について考え、自身を複製するマシン「Uポット」の構想を練っていた祐機の前に、天才投資家の娘・ジスレーヌが現れて……二人の少年少女が、世界の生産を支配する組織「GAWP」に立ち向かい、物作りの意味をみせるお話です。
これは楽しかった。僕の中にある物作り心がくすぐられるったらないです。
といっても、作る方法について悩むというお話ではなく、作ったものが他の人に受け入れられるか、自分がやってることは正しいのだろうか、みたいなところで悩むんですが、迷いながらも手を止めることができず、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ受け入れられていくってのはいいですね。
順調に物事が進みだすとやってくるのが、祐機にとって親の敵でもあるGAWPで。彼の提案は一見すると悪くないようにも思えるけど、物を作る人がどんな思いで作っているかをまるで見ていないので、あんま気分良くないんですよね。
利益を上げるためなら、法でも何でも使って追い詰めてくるので、そのあたり大人な経験値が低いふたりは、残念なことになったりするんだけど、ギリギリのところで踏みとどまり、青臭いことを言いながらも、ちょっとずつ意識が変わっていって、世界を救うための一歩を踏みしめていく展開が良かった。
またエピローグが素敵なんだ。このふたりが生み出した平和が、新たな作り手を生み出していく、このシーンこそが、作者さんの見せたいものだったのかもしれません。
個人的な欲を言えば、もうちょっと恋愛要素がほしかったなあ。祐機とジスレーヌがいい感じなだけに、もっといろいろ見せてほしかったです。奥ゆかしいのも悪くないんですけどね。
不全世界の創造手(アーキテクト) (朝日ノベルズ)
小川 一水
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