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進め、骸横たわる荒野 幻獣降臨譚 / 本宮ことは
「いいか?忘れんなよ」
髪を撫でる手が止まる。
「いい女はたくさんいる。綺麗な女も、優しい女も、身分の高い女も星の数ほどいる。俺はいい男だから、これからもそんな女相手に選り取りみどりだ」
「……なんだ。やっぱり女たらしだって話じゃん」
「だがな。俺の背中を託せるのはおまえだけだ」
乙女の間、女性は精霊や幻獣を使役するという世界で、聖獣・光焔と契約したアリアが、巫女姫の力を得ようとする王家や騎士団が謀略に巻き込まれていくシリーズの第十四弾。今回は、故国リスタル王国へと戻ってきたアリアは、シェナンの姉と出会ったが、さらに意外な人物と遭遇して、ライルの元へと向かうことに……というお話です。
やばい。ライルがすっごい格好良い。
これまでは真剣でありながらどこか軽薄なところを漂わせていたので、僕の中では「悪くないけど、シェナンのがいいよね」という位置づけだったんですが、あの誓いのシーンでじんときた。同時に叶わぬ想いが見えて、切なくなる。
ともあれ、故国に戻り、シェナンのお姉さまであるシエネスティータ姫との出会いから、お話が始まっていくんですが、良い人ほど苦労してるよなあと思うばかり。わずかな時間であっても、シェナンのためにどれほどの尽力を捧げたかが伝わってきて、そりゃシェナンも敬愛するわけだ。
でも、ここではそんな弟話よりも、クルサードとの恋話に興味をそそられた。あーんもー、もうちょっと愛想よく!と思った僕がいる。
さて、できたお姫様がいればワガママなお姫様もいて、第二王女シェリカは、幼いが故に、甘やかされたが故に……というのはちょっと酷かな。でも、権力という力の強さを知らずにワガママを言う事の愚かさを、戦場という現実を知っていったのは良かったと思います。アリア自身、力について大きなショックを受けたからこそ、溺れることなく、負けることなく、進んで欲しいと思ったんだろうなあ。
身分高き人の前でも決して折れず、また慢心しない覚悟の言葉に、アリアの芯を見た気がします。
戦場は過酷な上に、内通者らしき存在が確認されて、さらに銃という計り知れない戦力を相手取ることになり、先行きが不安だけど、それでも……と思ってる差中に飛び込んできた報告は何!?ここで終わるなんて……ああ、もう!いつもながら引きは凶悪だ。
進め、骸横たわる荒野 幻獣降臨譚 (講談社X文庫―ホワイトハート)
本宮 ことは
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[本宮ことは][幻獣降臨譚シリーズ感想]
[講談社X文庫ホワイトハート][ライトノベル]
幕末魔法士 Mage Revolution / 田名部宗司
「俺たち気があってきたじゃねえか」
「本意ではないがな」
時は幕末。大阪適塾で学ぶ蘭学者にして魔法士である久世伊織は、一冊の魔道書を翻訳するために、出雲国松江藩を訪れた。失われた古の技術・魔法金属ミスリルに関する書物であるが故に狙われることも多かったが、そんな伊織の元に、近代魔法学の恩人シーボルトの孫・失本冬馬がやってきて……第16回電撃小説大賞大賞受賞作の幕末ボーイ・ミーツ・ガール。
うーん、普通かな。つまらないわけじゃないんだけど、特別惹かれることもなくて……というか、剣と魔法のファンタジーなのに、舞台を幕末にする意味があまり感じられなかったから、違和感あるのかも。
とはいえ、伊織と冬馬の関係は良かったです。出会いは最悪でしたけど、単細胞のようで熱い男の冬馬にだんだんと乗せられて、暗殺事件や神かくしなどの事件を追って行くうちに、お互いがいい感じに補完しあう仲になっていくところや、ふとしたことから、伊織の秘密を知ってからの関係も……でも、微妙にニヤリとさせてくれないあたりが、僕の心に響かなかったのかもしれない。
ラストはちょっとものすごいことになってたけれど、この謎は、旅を続けて行くうちに明かされて行くのかな。気にはなるけど……続きを読むかどうかは保留で。
幕末魔法士―Mage Revolution (電撃文庫)
田名部 宗司
ロウきゅーぶ!(4) / 蒼山サグ
「先生。私たちなら、やります。……試合、したいですっ」
「…………貴方たちまでがそう言うなら、仕方がありません。ただし一つ、条件があります。硯谷のレギュラーチームとして、慧心学園の素人さんたちに、全力で現実というものを教えて差し上げなさい」
小学生のバスケチームのコーチを引き受けた長谷川昴が、個性豊かな女の子たちに振り回されながら、バスケへの熱を燃え上がらせるスポコン物語の第四弾。今回は、初の他校との合同練習&練習試合模様が描かれるお話です。
保護者役の美星先生が急遽入院することになったことで、他校に赴いたら、風当たりが強くて、何かと問題ばかりなんですが、どんなところでも楽しんじゃう慧心学園のメンバーは、そりゃ強くなるわけだ。だからね、葵、キミはもうちょっと自重すべきだ。
とかなんとかありつつ、まあ、子どもたちとキャッキャしつつ、葵が勘違いしては騒いだりといういつもの前半があり、赴いた先での硯谷女学園で同じような境遇のコーチが居たりして、お互い迷いながらも、面倒をみている子どもたちのために、といういい刺激をしあったりと、そんな感じで話が進みましたが、やはり、素晴らしいのはバスケシーンです。いえ、個人的には試合の前日、昴がみんなを寝床に運ぶシーンもすっごい良かったですけどね。でも、試合になると……すごかった。
これまでは、経験者である智花を中心として動いていたチームだけど、新たなチームプレイが見えてきて、それがきちんと動いてるところがすっごくいいんです。アイス・エイジとかナチュラルボーンのトリックスターとか、各選手にうまい二つ名つけて、その名に恥じないプレイをしてくれるからしびれました。ああ、ほんといい。
ただ試合に挑むだけではなく、バスケを通じて成長して行く子どもたちのお話でもあって、はじまりはいがみ合っていた子どもたちが真剣にプレイしあって、お互い切磋琢磨していく様には……指導者として、こんなうれしいことはないんじゃないかしら。
敵ながらあっぱれな選手もいるし、もちろんこっちも力いっぱい応援したくなるものがあり。そして、あの最後のシーン。涙もんでした。思わず SLAM DUMK のワンシーンを連想し、感動させられました。すごいなあ。試合までの間が、もうちょっとアレなら、もっといいのに……と毎回思いつつ、楽しいので読んじゃいます。
ロウきゅーぶ!〈4〉 (電撃文庫)
蒼山 サグ
円環少女(サークリットガール)11 新世界の門 / 長谷敏司
「わたし……、うまくいえないけど、わたし……」
きずなが、ついに気丈でいられなくなって膝をついた。
「こんなことしたかったわけじゃないよ。武原さんと、わたし、どこへ行きたかったんだろう」
やさしい性格が土台にあるからこそ、現実に絡め捕られた今のきずなには、仁を頭ごなしに否定できない。
「わからなくても、まずは歩きながら決めるんだ。足を止めたら死んでしまう旅が、この世にはある」
いやあ、すごい。ここまできて、さらに新たな局面が見られるとは。
王子護が魔法使いの存在を全世界に公開するという、とんでもないことをしでかしたおかげで、魔法使いたちの間だけで起こっていた問題が、政治まで巻き込むことになるから、ペテンといえどもあなどれない。
どこにも後ろ盾のない仁たちは、身を隠しながら落とし所を模索することになるんだけど、きずなという存在が、良くも悪くも追い詰めてくれることになってくれてしまって、とても心が痛いったらない。守りたいという思いが、こんなにも届かなくなってしまう現実が残酷でした。
一方、仁は、これまでとはちょっと違う感じがしたような。背負うものが大きくなって、ちょっと吹っ切れたのかな。まだ悪人には成りきれていないけれど、負けないとか生き延びる、というのではなく、勝ちにいこうとする姿勢が印象的でした。メイゼルとの仲はいつもどおりですが……テレビのシーンでのメイゼルの生き生きっぷりが素晴らしく、仁の教育者としての人生は終わってしまったのではないかと思ったりする。
現状、一番孤立しているのは、京香なんじゃないかと思ったりするんですが、周りに支えてくれる人が居ないというのは、辛いものがあるよなあ。それでも決して倒れず、あきらめないところに彼女の強さがあるわけですが。いつか仁が戻ってこれたらと願いたくなる。
それにしても、再演魔術とは、何という強さを持っているんだろう。たったひとりなのに、多くの人が恐怖する理由がよくわかる。それでも、たとえ強くても、手を汚す事に、普通の人は耐えられないから、きずなは涙を流したままになるんですが……。
甘い誘惑を跳ね除けることは、できないのはわかります。でもその結果がアレとは……いったいラストはどういう意味なんだろう。まさか本当に……とかいろいろ気になって仕方ありません。はやく続きが読みたい!
円環少女 (11)新世界の門 (角川スニーカー文庫)
長谷 敏司
角川書店(角川グループパブリッシング)(文庫)
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アクセル・ワールド(4) 蒼空への飛翔 / 川原礫
……先輩、もし僕が負けたら、あなたあものすごく怒って、そして悲しむでしょうね。でも、きっと最後には解ってくれると信じてます。僕が、あなたの騎士を目指しているからこそ、こうしなくちゃならなかったんだってことを。
<加速世界>と呼ばれるバーチャルな世界で、生徒会の副会長である美少女<黒雪姫>といじめられっ子のハルユキがレギオンを作って……というシリーズの第四弾。今回は、自身の象徴である「翼」を奪った能美に対して、再び立ち向かうお話です。
良かった。ほっとしたー。
三巻のラストがとんでもない終わり方をしていたので、やきもきして待ち続けていて、読み始めたらまた落とされるし、肝心のチユリは何も語ってくれないしで、もどかしいばかりでしたが、信じることが後に繋がっていくところが良かったです。孤独な戦いに挑み、理解されるまでは、幼なじみの視線が痛かったと思うけれど、めげずに頑張ったチユリが素晴らしかった。
一方、例の小悪党っぽい能美とのお話は、まあ、なんていうか、いろいろ後付っぽいものを感じなくもないけれど、彼を倒すために、他のレギオンと協力して行くところとかいいですね。貸し借りというのもあると思うけど、それ以上にハルを気に入ってたりすることが一番大きいのかも。ニコしかり、今回初登場のクールなメイド姿のブラッド・レパードしかり。
女の子に囲まれて、というよりかは、彼がブレイン・バーストした世界でやろうとしていることに期待してる人が多いんだろうな。
能美たちのグループがやっていることは、裏技というか禁忌に近いものがあり、立ち上がったハルたちに再び絶望が押しかけてきましたけど、そこへやってきた先輩……ああ、やっぱり格好良い。彼女あってこそのレギオンだとつくづく思いました。
まだきな臭いことは多いけれど、またひとり仲間が増えたことで、ネガ・ネビュラスもいい感じになってきましたね。いや、もうひとりいたか。
ハルという存在がいても、やはりどこか孤独なところを見せていた黒雪姫の傍に、彼女が戻ってきてくれたことは大きなことだと思います。
あとは……序盤にハルにだけ聞こえてた「声」のことが気になる。
アクセル・ワールド〈4〉―蒼空への飛翔 (電撃文庫)
川原 礫
楽園の魔女たち 大泥棒になる方法 / 樹川さとみ
「支部長さんっ!こっちです!!」
「おおっ!」
かがり火のあいまに、二頭の馬と乗り手が見えた。
地面まではまだかなりの距離がある。グッと一瞬ひるむ。
ええい、かまうものか!
「いま行くぞ、流星号―っっっ。おまえのためなら、私は鳥になれる……っ!!」
力はあるけれど性格に難のある魔術師エイザードと、彼のもとに集まった個性豊かな女の子四人のお弟子さんが繰り広げる修行と騒動を描くシリーズの第八弾。今回は、ファリスと支部長さんが、馬術競技大会参加するため、オーガンの街を訪れたら、そこでは伝説の大泥棒<ウォルスの霧>が暴れていて……というお話。
ああ、面白かった。どちらも真面目だから、どうなることかと思ったけれど、喜怒哀楽が激しい支部長さんとフォロー役に回りやすいファリスは、意外にいいコンビですね。
やってきたオーガンの街は、活気づいているけれど、同時にスリやら何やらで油断も隙もないところになってて、ある意味隙だらけな支部長さんが、大切なものをスられて、挙句の果てに、大泥棒に間違われるんだから、災難でした。よりによっての怪しい行動をしてたことが原因なんだけど、彼を知ってる人ならなんでそんなことしたかわかるから……「背中についたゴミ理論」とはよくいったものだ(にやり)。
そんな支部長さんの無実を証明するために、ファイスが動くんですが、いろんなところで、これまでの経験が生かされて行くところが素晴らしかったなあ。カードとかいい伏線ですよね。ファリスはドキドキだったけれど、こちらはにやりとさせられるばかり。
大泥棒の正体は?というあたりから、悪人たちの思惑が見えてくるんですが、暗い過去を持つ男たちと、利発でパパ大好きな少女と、その他もろもろいろんな人の気持ちが入り組んだけれど、不器用なふたりが力を合わせたら、こんなにも素敵な笑顔を守ることができるんだから、ほんと良かったです。
ファイルが本気で怒ったり、支部長さんが空を飛んだり(?)、いろいろな二人を身られて大満足。戻ってからも、何か二人でやってくれたらうれしいな。
楽園の魔女たち―大泥棒になる方法 (コバルト文庫)
樹川 さとみ
狼と香辛料(14) / 支倉凍砂
「あなた方は私たちの村で奇跡を起こして私たちを救ってくれました。そのあなた方が」
エルサは言葉を飲み込み、それは同時に涙を飲み込んだようにも見えた。
「そのあなた方が奇跡で救われないのだとしたら、どうして私は神の教えを人に説けるのですか?」
麦に宿り豊作を司る賢狼の少女・ホロと商人ロレンスの旅路を描く物語の第十四弾。今回は、ヨイツまでの地図を手にいれることができ、共に向かうことができると喜んでいたロレンツの前に、禁書騒動が持ちかけられて、というお話。
あー、もう、たまらん。ニヤニヤが止まらない。
読んでる身としては、ふたりがどんな関係かってのはわかりきっていることなんですけど、それを第三者から指摘された時のロレンスといったら……!どんな顔をしたのか想像するだけで、やばいです。同じことをホロが言われたら、内心どうなるんだろうとか想像して更にニヤリ。
ともあれ、ヨイツまでの道が見えてきたところで、テレオ村のエルサと出会い、彼女が旅の共としてついてきた書籍商ル・ロワに、ある禁書を手に入れたいという話を持ちかけられるんですが、ここでの決断は、非常にやりきれなかったなあ。
でも禁書は場合によっては北の地に影響を及ぼす可能性があり、手に入れる手伝いを下ほうが良い。でも、手にいれるために街を離れたら、ホロと一緒にヨイツへ行くことができない。
合理的なものを考えたら、そりゃ禁書を選ぶ方が良いというのはわかるけど、これまでいろいろあったホロとの旅の終点がこの街になってしまうことは、やっぱ突然すぎるし寂しい。それを感傷とか言ってくれちゃうから、まったく立つ瀬がないですが、資金の交渉や旅の準備をしながら、ふと訪れる寂しさが、胸にきました。大切な人が傍にいることの温かさって、得難いものだと思わせてくれますし、あり得ない未来の妄想をしてしまうのも……ね。
そんな我慢をエルサに気づかれて、そして彼女が何かできることはないかと言い出した心情は、素晴らしいものがあったなあ。そうだよ、これまで他人のために奇跡を起こしてきた二人が、自分たちに奇跡を起こせなくてどうするよ!
無茶ぶりを受け止めて切り抜けたロレンスが見せた素の感情に、ホロの「たわけ」がいろいろな意味を見せてくれて、うふふとなりました。
さて、これでようやくヨイツへの旅が見えてきましたね。また二人の旅になると思うと、いろいろ考えてしまいますが(特に最後の方の二人のやり取りを見ちゃうとね!)、ま、旅の間は、今までと変わらないかな。最後には笑顔でいられるといいなと思いながら、あとがき読むと……え?
狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)
支倉 凍砂
魔女の戴冠(2) The Witch's Coronation / 高瀬美恵
楽しい旅行になるはずだった。リィリィと二人でいろいろな教会を見学し、いろいろな名物料理を食べ、いろいろな乗り物に乗って……アーダベルトとも、笑顔で再会できるはずだった。
なぜ、こんなことになってしまったのだろう。
魔女の養成学校である聖エレオノーラ女学院に通うキアラと、教皇庁の役人で力はあれどのん気で要領の悪いアーダベルトが、魔法の関わらう事件に巻き込まれていくシリーズの第二弾。今回は、夏休みにキアラが親友のリィリィと共に、アーダベルトの街へ遊びに行こうとしたら、列車事故に巻き込まれて……というお話です。
これは面白かった!
一巻は、わりと普通って感じだったんだけど、二巻になってからのサスペンス具合に一気読みさせられました。夏休みに入る前の、オルテンシア先輩やグイド親分の登場でクスクス笑わされて、さあ旅行というワクワク感たっぷりな始まりだったのに、列車の脱線事故ひとつでこんなになるとは……。
傷付いた人の手当をして、生存している人たちみんなで固まり、ちょっと傲慢な若造がリーダーシップを取って、救助隊が駆けつけてくるまで乗り切ろうとしたときに、ひとりの少女が行方不明になっていることからの変貌っぷりは、空恐ろしいものがありました。
みなの記憶が曖昧になる中、自分だけは正気でいるって……ゾクゾクする。
命の危険にさらされたところを助けてくれた人は、何とも奇妙なものでしたが、アーダベルトとの関係や、アーダベルトの過去など、いろいろ見られて、ふむふむとなりました。個人的にちょっとアレっと思ったのは、キアラがアーダベルトを意識していたことかな。前巻だとそんな印象を受けなかったので……まあ、事態が事態だったからというのもあるかもしれないけど。
脱線事故を引き起こした輩の策略により、キアラたちが陥れられて、楽しい旅行が逃走劇へとなってしまい、ちょっと悲しいものがありましたが、敵として動く人はまだ健在だし、さらにはその後ろにいるのが……これはヤバイことになりそう。
魔女の戴冠〈2〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
高瀬 美恵
身代わり伯爵の誓約 / 清家未森
「いや……。相変わらずめちゃくちゃだと思って」
「何よ、嫌味ね」
「嫌味じゃなくて、惚れ直してるんです」
「……!? き、急に何、こんな時に変なこと言わないでよっ」
「あなたを守る剣は俺が持ってるから。俺を守るだとか可愛いことは言わないで、今日は大人しく守られていてください」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第十一弾。今回は、リヒャルトの王位奪還のために単身宮殿へと向かったミレーユが囚われの身になり、しかも記憶を上書きされて……というシアラン編の完結となる物語です
あー、もう!なんというゴロゴロ本なんだ!
シアラン大公の手によって、記憶を失い、花嫁衣裳まで着させられたミレーユでしたが、心配してたら、どんなときでも彼女は彼女だったりして、その型破りっぷりにニッコリ。
で、ミレーユを取り戻しにいったリヒャルトの全開っぷりが、素晴らしかった。嫉妬光線を出しまくりだし、近づいたら……という積極的行動に、こんちくしょうと頬の緩みが止まらなかったです。そりゃミレーユもぼうっとしてしまうよ。逃亡劇を繰り広げてる最中でも、甘いやり取りを忘れない様にニヤリニヤリ。
いろんな意味で、野獣と呼ばれたリヒャルトの本領も見せてもらいましたが、それより何より、これまで我慢して、言いたいのに言えなかった、たった一言を告げることができたミレーユに……良かったねと頷きたくなりました。彼女はどこか男女平等の距離を持っているから、大切な人を作れるのか不安ではあったから、こうして想いを告げることができて、ほんと良かったです。
そんな二人の様子もさることながら、シアラン大公の手をくぐり抜けて、でも多勢に無勢だったりするところで大活躍してくれたのが、我らがフレッドだったところが嬉しかったなあ。やっぱり、この人の明るい腹黒っぷりはいいですよね。
計算高く、利用できるモノは何でも利用して、妹を傷つけようとする輩は、決して許さないその強さに、拍手したくなりました。
妹が離れて行ってしまうのは可哀相だけど、彼を思ってる人もいるんだし、そんな寂しがらないでほしいな。
いやあ、面白かった。
リヒャルトに嫌疑をかけられてから八年の歳月が経ち、その間、苦労も多かったと思うけれど、再び故郷に戻ることができて、しかも愛する人が傍にいてくれるんだから、こんな嬉しいことはないだろうなあ……まあ、ミレーユの父とはいろいろ大変そうだけど、それは乗り越えていってほしいものです。
さて、これで一段落付きましたが、まだ話は続くそうです。次からは新章となるとか。ミレーユの花嫁修業とかが見られるようになるみたいですね。またコミカル展開になるのかな。今回のお話の最後で、何やら不穏な言葉を残した人もいたので、そちらの動きも気になるところです。
身代わり伯爵の誓約 (角川ビーンズ文庫)
清家 未森
角川書店(角川グループパブリッシング)(文庫)
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