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ボンクラーズ、ドントクライ / 大樹連司

――これはもしかして、もしかすると、すごく、いい映画になるんじゃないか。
胸が高鳴るとは、きっとこういう気持ちを、言うのだろう。
二人の姿をはやく、実際にカメラに、ファインダーに収めてみたい。
僕はそう思った。
この時はまだ、ごく単純に、そう思えたのだ。
――この時はまだ。

特撮映画好きの藤岡の熱意に惹かれて、佐々木は映画研究会に入ったが、映画を撮るという目標だけは高くとも、たったふたりの部員では何も出来ず、実態は特撮ヒーローになりきるごっこ遊びばかりをしていた。ところがある日、映画の撮影を真剣に考える少女・桐香が、映画研究会の実態を知り、部室を賭けて映像勝負をしようと言い出して……片田舎に住むボンクラな僕たちが繰り広げる、眩しく苦い青春物語。

青春ものと聞いて手にとってみたんですが、これはよかった。映像勝負から始まったいがみ合いから、気づけば一緒に映画を撮ることになっていくとか、本当にもう!これまでただ漫然と日々を過ごしていた少年が、ちょっとだけ専門の知識を持ってる女の子に引っ張られて、目標に向かって進んでいき、もっとこう撮りたいとか考えるようになるところとかいいですよね。

でもその爽やかさが、少しずつ変わっていってしまうのは、人を思う心が生まれてしまったからでした。

強いと思っていた桐香のコンプレックスと弱さ、そして皆が気づいていなかった可愛さを知って、より彼女を綺麗に撮りたいと思うようになればなるほど、彼女が藤岡を誉めるたびに胸が痛んで……一度だけ見たことのある素敵な笑顔が、映像として撮りたいと思っていた笑顔が、自分ではないところに向けられたことがきつかった。

映画を撮り進めるに連れて、これまで何かと突っかかりあっていたふたりが、意識し始めて。佐々木なら、間を取り持つことが出来たはずなのに、自覚した思いが邪魔をして……他の人を思いやっているようで、実は自分の思いから目をそらして、八つ当たりをしていた心が痛々しかった。

ただ、物思いに沈むような感じで終わらないのがこのお話のいいところだと思います。バカかもしれないけれど、後悔を特撮ヒーローへの思いに乗せて暴走する姿は、いろいろなものを吹っ切らせてくれたと思いました。最後まで撮る事ができなかったシーン13の言葉が、一番響いたのは……ね。

こらえる涙もまた青春だと思います。

ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫) - 大樹 連司

ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)
大樹 連司

小学館(文庫)
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[大樹連司] [ガガガ文庫] [ライトノベル]

ショコラの錬金術師(2) ミルク色の秘薬 / 高見雛

「……イルゼは、ルーウェン先生のことが嫌いなの?」
「そ、そんな聞き方、ずるいわ……」
イルゼは、唇を引き結んでアニカを睨みつけようとするも、顔に力が入らず、拗ねたような表情になってしまう。
「わからないの……」

錬金術アカデミーに通うアニカとイルゼが、ひょんなことからチョコレート専門店「トロイメリッシュ」に居候することになって、恋と魔法に翻弄されるシリーズの第二弾。今回は、トロイメリッシュの職人ルーウェンとクラウスに、訳ありの美女フランカが訪ねてきて……というお話。

あらあら可愛いお話になってきたじゃないですか。アニカをアカデミーに引き戻すためにやってきたはずのイルゼが、恋を自覚していくところにニヤリとしてしまう。意識してしまってからのドギマギ模様とか、つい墓穴を掘っちゃうところとか、普段お姉さんっぽさを見せているだけに、妙に可愛く思えた。アニカともちゃんと喧嘩できて、仲直りして。友だちだなあ。

恋を自覚するきっかけとなったのが、ルーウェンたちと過去を共有する儚げな美女フランカの存在ですが、まあ、彼女の役割は、登場当初から読めてしまうもので、そのあたりはちょっと物足りなくもある。今回って、恋と友情話としてはとてもいいんだけど、それ以外のところがあまり描かれていないのが残念です。チョコにしろ、錬金術にしろ、ほとんど出てこなかったし。

ただ、その分キャラクタの魅力はたっぷりでした。新登場のイルゼの兄マリオンの引っ掻き回しっぷりといったらもう!ちょっとした鍵をもっていたとはいえ、それほど話しに絡んではいなかったのに、そのシスコンっぷりと愛嬌の良さによる騒動は楽しかった。イルゼからすると疫病神でしかないだろうけど。個人的に、マリオンの冒険物語が読みたい(真顔)。

フランカの存在とアニカの薬によって、ちょっと態度が変わってしまったイルゼが、浮き上がったり沈んだりと忙しくしているところや、そんな彼女を積極的に、あるいは腹黒く応援する仲間たちの様子を見ては、ニヤニヤするお話でした。

最後ちょっと駆け足気味だったので、もうちょっと何かあってほしかったな。

ショコラの錬金術師 2 ミルク色の秘薬 (ショコラの錬金術師シリーズ) (コバルト文庫) - 高見 雛

ショコラの錬金術師 2 ミルク色の秘薬 (ショコラの錬金術師シリーズ) (コバルト文庫)
高見 雛

集英社(文庫)
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[高見雛] [コバルト文庫] [ライトノベル]

仏果を得ず / 三浦しをん

「いいか、俺たちには余計なことをしている時間はない」
兎一郎は冷徹すらある響きで言った。
「義太夫の奥深さと歴史に比して、一人の人間に与えられた時間はあまりにも短い。その時間のなかで、俺たちは自分の芸道を突きつめつくし、あとにつづくものに伝えていかなきゃならない。これは、義太夫を選んだものの使命だ」

人間国宝だけど自由気ままな銀大夫師匠から、ある日三味線の腕は良くとも、変わり者な兎一郎と組むよう指示された健。師匠の言葉は絶対として、不安を覚えながら兎一郎に声をかけたが、自分が納得しないと動かない兎一郎に、何かと振り回されて……文楽に打ち込み、芸と恋に悩む若き大夫を描く物語。

これは面白かった。周囲にいる人たちがくせ者ぞろいで、下っ端な健は振り回されっぱなしなんだけど、舞台では、その人たちのすごさに、時に涙し、時に打ちのめされて、遠い遠い目標に向かっていくという真っ直ぐな男性の姿が、とても好感。

ちょいと軽いキャラのせいか、いじられてることが多く、特に銀師匠には、理不尽な怒りを向けられることもあるけれど、なんだかんだフォローしてるところをみると、愛されてるなと思います。

それにしても、健が成長していく姿は、いいなあ。登場人物の気持ちがつかめず、どうにも芯が通らない語りをしては、いろんな人に叱られるんですが、何気ない日常の中でヒントを掴んで、ぐいっと前に進む、その瞬間の描き方が素晴らしい。なんちゃらは、芸の肥やしというのは、あながち間違いでもない……というのは、ちょっと語弊がありそうだけれど、ただただ一人で稽古していても掴めないものが、文楽とは関係ない人とのやり取りで掴めたりするから、経験ってのは大事だ。

ま、師匠の女癖によって、夫婦喧嘩に巻き込まれる弟子としては、いろいろアレでしょうけど。普段たいして話をしない無口キャラ兎一郎が、結婚していたことはちょっと驚きましたが、ここもまた夫婦の……いやはや大変だ。

ちなみに、夫婦喧嘩して奥さんから逃げていた師匠を連れ戻そうと追いかけたら、帰りたくないからと都都逸勝負を仕掛けてくる銀師匠の大人気なさが好きです。この都都逸も面白かった。

師匠に追いつくという思いと、もうひとつ自分の中にある理想に届くためにと、芸に磨きをかけていたら、出会った女性に一目ぼれして……色恋沙汰から、あやうく身持ちを崩しそうになったとき、厳しくもきちっと言ってくれた兎一郎の言葉が重い。芸道とは、かくも覚悟が必要なのか。だからこそ、「道」なんだろうなあ。

稽古して稽古して、それでも掴めないものがあり、ようやくたどり着いても、また先がある。それでも極めたいと思う人の情熱に、拍手したくなるお話でした。

面白かったなあ。この人たちの語る文楽を聞いてみたくなります。っていうか、文楽は触れたことがないので、これを機に行ってみたい。

仏果を得ず (双葉文庫) - 三浦 しをん

仏果を得ず (双葉文庫)
三浦 しをん

双葉社(文庫)
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[三浦しをん] [一般]

沈黙 / 遠藤周作

「では、お前は祈るがいい。あの信徒たちは今、お前などが知らぬ耐えがたい苦痛を味わっているのだ。昨日から。さっきも。今、この時も。なぜ彼らがあそこまで苦しまねばならぬのか。それなのにお前は何もしてやれぬ。神も何もせぬではないか」

江戸時代。基督教が弾圧される日本にやってきた、若きポルトガル司祭の苦悩を描く物語。

これは重く、怖い。

迫害されている信徒がいる、前任の司祭が棄教したという噂を聞いて、熱意を持った司祭がポルトガルから、日本へと密航して、基督の教えを広めようとするところから物語が始まるんですが、たどり着いた日本での出来事が、じわじわと司祭の心を蝕んでいくからすごい。

小さな村で、細々と、でも続いている信仰に対して、司祭としての役割を果たすことは、とても困難であり、だからこそ実ったときの達成感は、変えがたいものであったのに……密告が村の人の疑心を生み、やがてやってくる役人たちによる「踏み絵」が重かった。形だけだからという言葉は、もしかしたら本心であったかもしれない。でも、信仰を持つものにとっては……

従わぬものに対しての罰はあまりにも残酷でした。殉教というには、あまりにも惨めな死がそこにあった。

神を信じる司祭が、村の人に対して踏んでもいいと思わず言ってしまいそうになるほどの出来事を経て、やがて彼自身も囚われの身となったわけですが、むしろ囚われてからのほうが平和な静謐が訪れたりするから皮肉としか言いようがない。

でも、本当に辛いのはここからだったと思う。棄教を迫る井上筑後守によって、じわりじわりと、肉体的ではなく精神的に追い詰められていく様がきつい。予想していても、目の当たりにしたら隠せないショッキングな出来事があり、あれほど神を祈っていた人が、その存在に対して、なぜ?と考えるようになってしまうところが恐ろしかった。

またこの時代の宗教観も興味深かったなあ。井上の語る日本という国の事情というか風習というか、そういったものに基督教はなじまないという考え方と、この地で二十年という時をかけて教えを説いてきたからこそ、日本では基督教を受け付けぬ何かがあると、転んだ司祭が呟いた言葉が印象に残っています。同じものを見ているようで、見ていないというのは……ショックだろうなあ。

自分の弱さを見せつけられて、それでも神は沈黙していたように思えましたが、その沈黙の中に、自分なりの答えを見つけることができたのは救いだったと思いたい。

ページ数はそれほどでもないのに、ごっそり持っていかれ、いろんなことを考えさせられるお話でした。すごいな。

沈黙 (新潮文庫) - 遠藤 周作

沈黙 (新潮文庫)
遠藤 周作

新潮社(文庫)
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[遠藤周作][一般]

サクラダリセット(6) BOY, GIRL and ― / 河野裕

でも、本当に悲しい時、それを受け入れるのが正解なのか。
全部、諦めろというのが、正義なのか。
例えば、能力で救われた人に、やっぱり間違いだったから、もう一度苦しめというのが正しいのか。
―そんなわけが、ないだろう?

人口の約半数が能力者という咲良田の地で、世界を巻き戻す「リセット」という強力すぎる力を持つために、公的機関の「奉仕クラブ」に所属することになった浅井ケイと春埼美空が、遭遇する出来事を描くシリーズの第六弾。今回は、復活した二代目の魔女・相麻の協力を得て、咲良田の能力を消滅させようと目論む管理局の浦地が動き始めるお話です。

まさかこんな展開になるとは思わなかった。

能力は是か非かという視点から物語が描かれていき、能力があるから不幸になると思っている人たちが、伝手や権力を使って、少しずつ能力消滅へと持っていくという展開なんですが、浦地に協力する一方で、浅井ケイに断片的な指示をする魔女の思惑が見えないだけに、ドキドキする。

能力については、人それぞれ思いが異なるとは思うけれど、どれが正しいと言い切れないだけに、難しいよなあ。

そして、断片情報だけを与えられる浅井ケイは、ある意味振り回されていましたが、その一方でこれまでにない幸せな気持ちにたどり着けたことが嬉しい。なんとなく、ケイってこういうことを言わない気がしていたからなあ。ま、それは友人に背中を押されたこともあると思うけど。

そうだよ、もっと単純でいいんだよ。人への想いは。

ケイが届けたいと思った言葉によって、春埼が笑顔を見せてくれたことは嬉しく思いました。

ただ、この幸せが……なあ。まさか、このシリーズで、こんなにも切ない思いが描かれるとは思わなかった。能力があるからじゃない。好きな人の幸せを思った行動が、こんなにも重いものになっていたなんて、予想もしていませんでした。それは強さであり弱さであり。
シャワーにかき消された思いに、じわりとくる。

能力を嫌うものによって、まさにタイトルどおりの「サクラダリセット」が放たれ、全てが変わっていくのを見ると、これは正しいとは言えないのではないかと思ってしまいますが、ただひとつの力を持つケイが、このサクラダリセットにどう立ち向かっていくのか。続きが待ち遠しくてなりません。

サクラダリセット6  BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫) - 河野 裕

サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)
河野 裕

角川書店(角川グループパブリッシング)(文庫)
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[河野裕] [角川スニーカー文庫] [ライトノベル]

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる / 森橋ビンゴ

最近はどういうわけか、会話するのもぎこちない。きっと東雲はスランプで苦しんでるんだろうと思うと、俺もあれこれ言葉を選ばなくてはならないし、そうやって選んだ言葉にも、東雲は歯切れの悪い反応をする事が多かった。
不安だった。

高校生・三波栄太とクラスメイトであり作家の東雲侑子。恋愛小説を書くために、付き合うフリをするところから発展した恋を描くシリーズの第二弾。二人の関係が公になり、これまでと違った学校生活が見えてくる中、東雲がスランプになって会えない日々が続き……というお話。

このもどかしさがやばい。心当たりがありすぎる。メールが来ないこと、電話での何気ないひと言が気になってしまうこと。相手の気持ちが分からないから聞いてみたいけれど、返される言葉が怖くて聞けないとか、グサグサきますね。自分なりに相手を思った言葉が上滑りをして、会話がぎこちなくなっていくところとか、もう見てられない。

何が悪いというわけでもないのに、気がつけば距離が出来てしまうすれ違い模様が、痛くてもどかしくてつらい。でもやっぱり読んでしまうんだなあ、これが。

すれ違いはこの二人だけではなく、兄とその恋人・有美さんもでした。誤解だというのに怖くて聞けない有美さんと、言葉にしなくてもと考えるお兄さんの間では、どうしたって足りないものが出るから……なんだけど、言葉よりも行動で示したお兄さんは不器用だなあと思いつつ、ニヤニヤしちゃいました。この人はデレたらすごそうだ。

折りしも、スランプによって遅々として筆が進まない彼女に遠慮していた栄太が、何かと声をかけてくるようになった快活な演劇部の女の子・喜多川といたら、兄と同じような誤解を受けることになったわけですが、考えすぎて自分の思いにすら疑問を抱くようになってしまう彼の迷いと、それを吹き飛ばせた東雲の想いをこめた小説に、ああってなる。

憎らしいといわれて、鈍感だといわれて、それでも一緒にいたいという思いが伝わってきて、本当に良かった。いいですね、恋って!

不器用でもどかしい思いを感じるのが好きな人にオススメのシリーズです。

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫) - 森橋ビンゴ

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)
森橋ビンゴ

エンターブレイン(文庫)
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[森橋ビンゴ] [ファミ通文庫] [ライトノベル]

ようこそ、古城ホテルへ(2) 私をさがさないで / 紅玉いづき

「あのねっ違うよフェノンちゃん!」

「ピィたちはねっ、正義の味方なんかじゃないよ!」

「マルグリットの、みんなの、味方だよ!」

若く美しく、変わり者な四人の女主人を擁するホテル「マルグリット」の騒動を描くシリーズの第二弾。今回は、女主人のひとり、ドジで幼い元魔女ピィが連れ去られるお話と、別の女主人・フェノンに恨みを持つものがやってくるお話が収録されています。

これはとても良かった。それぞれが過去を抱えて生きていて、その中に後悔もあるけれど、そのすべてを受け入れて前へ進もうとしてくれる仲間がいることが、どれほど心強いことか。差し伸べてくれる手が、かけてくれる声が、胸に響く。

ピィの元へやってきたかつての兄弟子たちの気持ちは、あまりにも憎悪が強すぎて恐ろしいほどでしたが、それをピィが受け入れてしまうぐらいには、魔術師の掟的なものは重いのでしょう。ただ、そのあたりがはっきり書かれていないから、もどかしくなりましたが、それはたぶん他の女の子たちも同じなんですよね。だからこそ、読んでいて、彼女たちがピィを取り戻しに行くときの気持ちに強く共感できるんだろうなあ。

それぞれが役割を持って行動して、戦う力を持たない姫様なリ・ルゥは、歯がゆい思いをしていたけれど、最後にはびしっと決めてくれて。彼女の登場が熱かった。じわっときたなあ。

これまでと異なり、帰る処がある、その思いが良かったです。

もうひとつ、特別編として収録されている「これがわたしのたからもの」は、フェノンがかつて名乗っていたフェ・フルールを探す少年パスパルと、フェ・フルール狙う盗賊団が、マルグリットへやってくるお話。

決して正義の味方ではないけれど、その時の気持ちで助けた少年が、こういう形でやってきてくれるのは、なんか嬉しい気がする。覚えてないといいながら、少年のために動いたのは、捨てた過去であっても、そのことを覚えてくれる人がいるという思いがあったからかな。

皆に迷惑をかけてはというフェノンに対して、もちろん残りの女主人たちが許すわけはなく。仲間のために、マルグリットのために、ひと芝居打つ彼女たちの想いが素敵だった。

本当のたからものは、ね。そうだよね。

重い共通点を持つ彼女たちだけど、成長しながら前へ進む物語は、とても気持ちいのいい読後感でした。続きがとても楽しみなシリーズです。

ようこそ、古城ホテルへ(2) 私をさがさないで (角川つばさ文庫) - 紅玉 いづき

ようこそ、古城ホテルへ(2) 私をさがさないで (角川つばさ文庫)
紅玉 いづき

アスキー・メディアワークス(単行本)
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[紅玉いづき] [一般]

カンピオーネ!(11) ふたつめの物語 / 丈月城

「何て言えばいいのかしらね?そう……あなたはもう、ふつうの人間ではない。草薙護堂は神殺し、カンピオーネである。こんなところかしら?」

高校生の草薙護堂が、神を殺し、神の権能を得た「カンピオーネ」になり、彼の愛人を自称する魔術師エリカによって、神々との騒動に巻き込まれていくシリーズの第十一弾。今回は、過去編。ウルスラグナを倒した七人目のカンピオーネとなった護堂が、神王メルカルトとの対決するお話です。

いやあ、いろいろ新鮮だ。これまでのお話では、護堂にべったりだったエリカが、ツンツンしまくりとかニヤニヤしちゃいますね。そりゃ初めから、そうだとは思っていなかったけれど、二人で行動する際に、ひょんなことから愛人のフリをすることになって……というときのドギマギが楽しかった。今では想像も付かないですけどね。

で、エリカやその後ろ盾の組織の力を借りつつ、メルカルトと戦い、力の使い方をろくにわかっていなかった護堂が、一気に覚醒していくあたりが痛快でした。瀕死になりながら、力にたどり着き、「剣」を使うときには……ね!仕方ないといいながら、教授するエリカが、なんとも可愛いものでした。

でも、本番はむしろその後に登場したサルバトーレ卿との話だったなあ。お遊びで戦いを求めてくる彼に対して、平和主義をうたう護堂が無視していたら、よりによってエリカが敵にまわることになって。

ここで見えてくるエリカの心境の変化が良かったです。世話の焼ける人といいながら、戦いに向かう彼女が格好よかった。護堂はまあ、いつもどおりですよね。

お遊びと言いながら、その戦いの模様は死と直結していて、さりげなく大技を繰り広げる二人の戦いは、いつものようにいろんなところを破壊しつくして行ったけれど、ただひとりで戦っていたサルバトーレ・ドニと、エリカの力を借りて戦いに挑んだ護堂ということで結果は……っていうか、みんなよく生きてるよね。

死闘を繰り広げても、けろっとして現れるドニもどうかと思うけれど、ま、なんだかんだでカンピオーネたちはみんなどこかおかしいよなと思わせてくれるお話でした。楽しかった。

カンピオーネ! 11 ふたつめの物語 (カンピオーネ! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫) - 丈月 城

カンピオーネ! 11 ふたつめの物語 (カンピオーネ! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
丈月 城

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[丈月城] [スーパーダッシュ文庫] [ライトノベル]

伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党 / 谷瑞恵

「でもあなた、妖精なんていないと思ってるんでしょう?」
「僕の現実にはいない。夢の中の存在だね。でもきみは、誰よりもずっと現実の幅が広いんだろう。ほら、目のいい人は遠くまで見えるじゃないか。きみの話を聞いていると、そんなものだと思えなくもないな」

妖精が見えて、彼らと意思を疎通できる妖精博士のリディアは、妖精が見えない人たちからは変わり者として見られていた。ある日、父と会うため、ロンドン行きの船に乗ったら、エドガーと名乗る男に誘拐されてしまった!伯爵であるという彼は、継承の証である宝剣を探しており、言い伝えに寄れば、それは妖精国にあるという。優雅だけど強引なエドガーの交渉で、つい手伝うことを約束してしまったが、ちまたで話題になっている連続殺人犯の特徴が、エドガーと似ていることを知って……というお話。

いやあ、悪い男だなエドガーは。でもそこに魅力があったりするから、困りますね!逃げようにも逃げられないのは、物理的にではなく、精神的に囚われてしまったからだよなあ。

ただまあ、エドガーにしても、目的のためなら人を騙すことなんて気にもかけていなかったのに、つい本音を見せてしまうあたり、ニヤニヤしてしまいますね。そりゃリディアも気になってしまうわけだ。彼女の傍にいる猫のニコ(お話できます)がヤレヤレと思う気持ちが良く分かる。

何かとやりあいながら、妖精に纏わる話を集めて、目的地に近づいていき、一方でそのお宝を手にしようとする別の悪党が、リディアの父をだまくらかして……という冒険ものな展開も面白い。

エドガーの過去は暗いものがあり、そのことに触れながら、リディアが傍にいるのは、彼が見えていない妖精に対して見せる態度が大きいと思います。見えなくても信じる思いが伝わってきて、これまで周囲にいない人だったから印象に残り……ね。

片方はふざけて、片方はツンとして、なかなか思いを相手に伝えようとしないあたりが、とても可愛いお話でした。

話は一区切りついているけれど、どうやらシリーズになっているっぽいので、ここからどう繋げていくのか楽しみですね。

伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党 (伯爵と妖精シリーズ) (コバルト文庫) - 谷 瑞恵

伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党 (伯爵と妖精シリーズ) (コバルト文庫)
谷 瑞恵

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[谷瑞恵] [コバルト文庫] [ライトノベル]

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