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美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星

「あいにく、僕には学がなくてね――僕にあるのは、美学だけだ」

私立指輪学園には、校内のトラブルを解決する組織がある。美少年探偵団という組織は、しかし依頼人に対する守秘義務が課せられているため、実態は知られていない。瞳島眉美は、ひょんなことから、美少年探偵団の団長と遭遇し、十年前に一度だけ見たという星を探してほしいと依頼するが……というお話。

これは楽しい。星を探すという無理難題に対して、謎が美しいという理由だけで依頼を受ける探偵団の、個性あふれる面々の行動が面白く痛快。彼らの行動に振り回される眉美の戸惑いっぷりも楽しかった。学園内でも有名人の面々に対して、はじめは気おくれしていたのに段々と素になるのも良かったなあ。個人的には、不良君が好き。

星を探すという壮大な無茶ぶりに対して、壮大な返しをしてくれる探偵団でしたが、気づいたらロマンチックな話が、別方面に大きく変わっていくから、また壮大。星を探すというだけで、命を狙われることになり、そんな危機を乗り越える探偵団の活躍が痛快でした。

夢をあきらめることになる少女が、新たな道を見つけるのも良かったです。これは続きが楽しみ。


晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と

「お待ちしておりました。今日は五月二十三日、キスの日です。大好きな人と寄り添う日です」
「……大好きな人」
「はい」

「一度のキスで、百年分の幸せをくれる人です」

大学二年になり、一人暮らしを始めた春近は、心に負った傷により眠れない日々を過ごしていた。そんなある冬の深夜、眠れないならと散歩をした公園で、犬を連れた女性と出会った。素敵な笑顔にひかれる春近は、彼女が人妻であると知りながら、思いを募らせていき……というお話。

これは素敵な町の物語だなあ。人々の関係が温かい。なかでもひまりさんと、いつでも彼女のそばにいる犬・有海さんの姿は、ほっこりさせられる。それだけに、春近からすると切ないんだけど……。

ただ、彼の思いはどこか恋というよりかは、淋しさからきているもののように思えて、衝動的に感じられたのが残念。とはいえ、この町に来て生まれ変わったと考えれば、かな。

春近とひまりさんだけではなく、同級生、先輩、保育園の園長など、いろんな人の恋が描かれていて、それぞれ叶わなそうな恋だったりするのが胸に痛い。仮に思いが通じ合っていても……というのはさらにつらい。

それでも、悲壮感ただようお話にならず、人を想うって素敵だなと思えるお話だったので良かったです。終わり方はもうちょっとすっきりさせてほしかったけど。


彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?

「でも、私が何者かは、先生には問題ではありません。それは人類にとっても問題ではない。ただ、人間はこうなるしかなかった、ということなのです」

近未来。人工細胞で作られた生命体「ウォーカロン」と人間を識別するための研究を行っていたハギリの研究室が、何者かによって爆破された。さほど重要な研究ではないはずなのに、いったいなぜ狙われたのか。彼を保護するというウグイによってハギリは連れられていったが、行く先々で命を狙われて……というお話。

人間とは、というのをただひたすらに考えていくお話で、淡々と語られる文章に、はじめは目が滑っていたんだけど、読み進めるにつれて世界観が見えてくると、面白くなってくる。

人の寿命が延びて、死という概念が曖昧になり、そこへほぼ人と同じである人口生命体のウォーカロンが存在していくと、そのふたつに差はあるのか、人間とは何かを考えつめていく様は、もはや思考実験のようなもので、次第に飲み込まれていく気がしました。

他のシリーズとも絡むところがあって、ちょっと追いかけきれていない僕としては、もやもやする部分も残るんですが、単に理解しきれていないだけかもしれない。もう一度読んでみるかなあ。

とはいえ、ミチルという名前が出てくると嬉しくなるし、なによりあの人の登場に心躍る。

続きがどうなっていくのか楽しみ。


バビロン(1) ―女―

「忘れるなよ、正崎。いかなる時でも儂らの戦う相手は」

「巨悪なのだ」

東京地検特捜部検事・正崎善は、製薬会社と大学が関与した臨床研究不正事件を追っていたが、容疑者のひとりが死体となって発見された。残された書面には、毛や皮膚混じりの異様な血痕と、紙を埋め尽くしたアルファベットの「F」。いったい男は何を残したのか……というお話。

面白かった。やっぱりこの人はストーリーテラーだなあ。

製薬会社の不正事件を追っていたら、カギとなる人が死体で発見され、その人物をさらに調べていたら、政治家たちの闇取引が見え始めてくるとか、引き込まれてしまう。正義である検事が、巨悪を見つけてどう動いていくかってところに、ドキドキが止まらなかった。

また副題となる「女」の登場がすごいんだ。はじめは、政治家たちの思惑を崩すために、一番弱そうなところをつこうとして踏み込んだだけなのに……ってところからのやり取りは、ぞわぞわするなんてもんじゃない。

さらにその巨悪が、目の前に現れてくるとか、いやあれは恐ろしかったなあ。ほんと面白かった。

ただ、終わり方はちょっと微妙なんですよね。謎が解けると拍子抜けしてしまうのは、ミステリー展開がすっごい面白く感じたからなんですが、でもここで続くということは、次はそういう物語になるってことがわかってるんだから、そういう楽しみ方をすればいいわけで(含みすぎ)。

続きがとても楽しみです。


覇剣の皇姫アルティーナ(9)

「国というのは、皇帝や貴族がいるから国なんじゃない。民衆がいるから国なの。みんながそれを忘れているだけ……だからこの国を変えるには、まず民衆を変えなくてはならないわ。貴方にそれができる?」

両親にうとまれ、辺境の地の司令官に任じられた皇姫アルティーナと、軍人としては落ちこぼれだけど軍師としての才を持つレジスが、帝都を立て直すために、立ち上がるシリーズの第九弾。帝都に呼び出されたレジスが、ラトレイユの軍師としてハイブリタニア軍の追撃戦へと挑むお話です。

それほど話が進まなかったなあ。次以降のための布石づくりといった感じでしょうか。

皇帝の死にまつわる疑惑を調べるために帝都へやってきたら、ラトレイユの軍師となって戦場に行くことになるんだから、そりゃ落ち着かなくなりますが、それでも立場を考えつつも、きちんと理想を追うあたりがレジスらしい。

ただ、戦の策というのは、いうなれば、いかに効率よく味方を殺すかということにもつながるわけで、そのあたりはどうしたって実際に戦う人たちの反感を受けることになるよなあ。ましてや一線目は敵たるオズワルドに読み負けることになったんですから。

最後に勝っていればいいというところではあるけれど、そのための布石がどう動いてくるかが見ものかな。

それにしても、離れちゃったがために、アルティーナの出番が減っちゃったのは残念だなあ。


エスケヱプ・スピヰド(4)

「守りたいものが出来た。大切なひとがいるんだ。彼女と、彼女がいる街の人々が危険にさらされている。……それを見過ごすことは、絶対にできない」

昭和101年。戦争によって廃墟と化した国を、軍最強の兵器「鬼虫」の一人である九曜と彼と主従契約を結ぶことになった少女・叶葉が歩んでいくシリーズの第四弾。奪われた仲間を取り戻すため、四番目の鬼虫四番式「蜈蚣」の井筒を目覚めようとする九曜たちのもとに、さらなる敵襲があり……というお話。

今回も熱い戦いだった。鬼虫たちの戦いもさることながら、名も無き機械兵達の戦いも、ほんとじんとくる。こういうところがいいんだよなあ。あと、目覚めながらも、迷いが晴れぬ井筒に対する叶葉の言葉とかね。やっぱり人を動かすのは、人の想いなんですよ。その思いに応える人たちが素晴らしかった。

熱いと言えば、やっぱりかつての仲間が敵にいるっていう展開ですよね。予想はしていましたが、やっぱりやるせない。いったいどうしてなのかというのが、今後明かされてくるんでしょうねぇ。また敵対した鬼虫の能力が厭らしくて、どうなることやら。

また圧巻の火力によるバトル展開も迫力や、敵に渡った蜂が九曜に対峙するとか、熱い場面が幾度となく出てきて、終盤の盛り上がりったらない。

それにしても、内通者という存在が浮かび上がってきましたが、まさか敵側にいるのかあの男だとすると、もしかしてあの人が内通者のひとりなんじゃ……と疑心暗鬼になる。

あと、今回一番印象に残ったのは、甲虫として敵対する少女・久留守の話だなあ。大切な人を亡くした少女に対して、憎悪を植え付けていく黒塚のやり方が苦いですが、それほどまでに大切な人となった鬼虫五番式の万字がなあ。できれば、もう一度会わせてあげたいけど……巴さん、何とかなりませんか。

エスケヱプ・スピヰド 四 (電撃文庫) - 九岡望

ギンカムロ

「打ち上がってから花火が上空に到達するまで五秒、開いて消えるのは二秒……たった七秒間のために全てを賭ける仕事って、他にあるかしら」

「それでも俺たちは、その七秒間に覚悟を乗せなきゃならないんです」

実家の花火工場の事故で両親を亡くした昇一が、祖父の連絡を受けて四年ぶりに帰郷したら、頑固な職人である祖父の弟子だという風間絢がいた。戻るつもりなんてない。そう思っていたのに、彼女の花火に対する熱を見るたびに、次第に心が動いて……というお話。

面白い。打ち上げ花火というのは、見たことがあっても、職人さんたちがどう動いているのかなんてことは知らなかったので、たったの7秒間のために、どれだけの技術と情熱がつぎ込まれているかがわかるお話には、熱いものがありました。

正直、事故で両親を亡くした昇一が、もう一度花火をと思うようになるところには、動機として弱いように思いました。でも、そこには彼なりの後悔があったんだろうし、何より絢の花火に対する思いに惹かれたんだろうなあと思えることが、ね。

奉納花火をもう一度という思いもすごかったけど、個人の打ち上げ花火の依頼に対して応える様に、職人の生きざまを感じました。

タイトルであるギンカムロとは、銀禿のことで、鎮魂の花火という意味なんだそうですが、これを打ち上げることの意味から、この町に隠されていることが浮かび上がり、さらには……というあたりは、人の感情のむずかしさを感じますが、でもそこで赦すことができるのが人の想いなんだろうなあ。

美しく、切ない花火が、とても似合うお話でした。

ギンカムロ (集英社文庫) - 美奈川 護

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(11)

「これからどうしよっか?」
「帰るだろ」
「そうじゃなくて……」

「ゆきのんのこと。それと、あたしのこと。……あたしたちのこと」

友達がおらず、ひねくれた孤独体質を更生させるべく、「奉仕部」に所属させられた比企谷八幡が繰り広げる残念な青春物語の第十一弾。バレンタインイベントの手伝いを通して、三人の関係の変化が浮かび上がってきてしまうお話です。

これはちょっと難しい。バレンタインデーイベントがうまく回ったのに、そこに違和感を覚えてしまうのが、八幡なんだよなあ。彼の言う「本物」は、いうなれば理想なわけで、それを求めてしまうのは……やっぱり不器用なんだろうなあ。だからといって、器用に立ち回ろうとする由比ヶ浜をずるいとは思えないけど。

なんとももどかしいものがありますが、中でも雪乃がなあ。家族に反発しつつも、その実、やりたいことが一番見えていないように思えるため、弱さばかりが目立って……

姉たる陽乃が何かと突っついてくるのはいつもどおりだけど、今回はその棘がいつも以上に鋭かったように思います。妹可愛さというレベルはすでに過ぎているように思うけど、そこまでするのは、彼女なりの後押しなのか、それとも……。

結局のところ、なんとなく見えている人間関係が、実は本当にそうなのか?とはっきりせず、それぞれが想像のうちで決めているところがあるから、違和感が大きくなってくるんじゃないかしら。

由比ヶ浜が動いたことで、この三人がどう変化していくのか。続きが気になります。


生徒会探偵キリカ(6)

「ほら、胸を張れ」

「きみは今、世界でいちばんかっこいい負け犬だ」

生徒数8000人超の巨大学園を支配する生徒会に、見習いとして入った牧村ひかげが、会計である聖橋キリカの「もうひとつの役職」のお手伝いをしながら、生徒会に関わるシリーズの第六弾。今回は天王寺狐徹に叛旗を翻したひかげが、生徒会選挙に挑むお話です。

うーん、面白かったけど、盛り上がりとしては、ちょっと物足りないかな。動けば動くほど、狐徹のすごさが見えてきて、結局のところ、彼女への憧れが原動にあるから、そこまでして挑むのがなあとか思ってしまう。いや、気持ちはわかるんだけど。

むろん、圧倒的強者に対してどう動くのかというのは見ごたえあったけど、ひかげの策にいつもほどの詐欺っぷりがなくて……というよりかは、そうさせなかった狐徹を誉めるべきかな。やはり駆け引きの上手さは、一日の長がある。

生徒会選挙であるがために、探偵たるキリカの出番がほとんどなかったのも残念だったなあ。とはいえ、彼女は狐徹が皆に見せていなかったものを見つけ出してきたし、そのショックを乗り越えたことで、成長した姿を見せてくれたけれど。

結果は、ほぼ予想通りでしたが、いやたしかに世界で一番かっこいい負け犬だと思いました。

亀裂が入ったように見えたけれど、最後には元通りになったので、とりあえず良かったよかった。


過敏症 魚住くんシリーズ(4)

どうして、悲しい話をする時、必ずこの人は笑うのだろう。

サラリーマンの久留米と、大学院生の魚住。学生時代からの親友が、ひょんなことから一緒に過ごすことが多くなり、次第に意識し始めていくというシリーズの第四弾。衝動を抑えられなくなってきた久留米と、誰かの接触に過剰に反応するようになってしまった魚住の二人が、ついに……というお話。

これはニヤニヤしちゃう。久留米が仕事の関係者に恋のアドバイスをしたら、実はその男が懸想しているのは魚住だったっていうんですからね! 先に気づく読者としては、たまりませんよ。

他人との距離があやふやな魚住なだけに、ちょっと不安はあったけれど、おかげで久留米が意識するどころか止まらなくなるんだから、いやはや、ごちそうさま。ふたりで一緒の朝を迎えて、目を覚ました時の雰囲気が、とても良かった。

そんな二人の話も良かったけれど、個人的にはマリの話が良かったな。

「マスカラの距離」では、以前に登場した女装少年・馨が、家出してマリに拾われる話では、彼女独特の雰囲気の一端が見えて、そんなマリに惹かれる少年の甘酸っぱい想いに、きゅんとなり。っていうか、「マスカラの距離」ってすごい絶妙だよね。

さらには、マリに惚れた男の人に対しての話「スネイルラブ」でも、彼女のひねくれた心が見えてきましたが、突っぱねた男に対してまだ続くのであれば、もしかしたらもしかして……?なんて気持ちにもなりました。

できれば、みんなに幸せになってほしいよねぇ。


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リーングラードの学び舎より(1)

「義務教育推進計画」で教師を命じられた王国屈指の術式師が、生徒と共に成長していく物語。決して熱い先生ではないのに、読み終わると熱いものが残る。そんな教育のお話でした。築かれる信頼関係が素敵です。→感想

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